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3話

久しぶりの更新です。お待たせしました。

  シャンティラとスーラ公国の皇太子であるルークハドの婚姻が決まって一ヶ月が過ぎた。


  ちょっとずつ嫁入りの準備が整いつつある。婚姻式用のヴェールも完成していた。後は衣装の仕立てとアクセサリーの件だ。これが仕上がれば、とうとうスーラ公国に出立する事になるが。シャンティラは姉のスーリと残り少ない時間を一緒に過ごしていた。


「……ティラ。スーラの皇太子殿下はどんな方かしらね」


「私もそれは思うわ」


「けど。ティラの相手だからね。優しい方である事を祈るわ」


  スーリの言葉を聞いてシャンティラは苦笑いした。スーラの皇太子であるルークハドは大層な美丈夫だという。性格は直接会って話してみないとわからないが。


「……姉上。ルークハド殿下との事を心配してくれるのは有り難いけど。自分の心配もしてね」


「わかったわよ。シェンク様は優しいけど。浮気をしないかだけは心配しておくわ」


  スーリが軽口を叩くとシャンティラはくすりと笑った。この姉とも離れ離れになるのだ。そう思うとちょっと鼻の奥がつんとなる。それを誤魔化しながらテーブルの上にあるアイスティーを飲む。


「姉上。シェンク様は浮気はしないと思うわ。けど言い寄る女性がいるだろうし」


「……そうなのよねえ。シェンク様って意外とモテるのよ」


「そうだったわ。シェンク様、顔はかっこいいし性格も真面目だから。陰で片想いしている女性が多いとか聞くものね」


  思い出して言うとスーリはちょっとしかめっ面になった。シェンクはイェラース国でも有力な一族の嫡男だ。確か、ウェイシェ家と言ったか。イェラース国の西部を治める領主の家系だったはずだ。


「……忠告をありがとう。ティラの言う通りね」


「……お礼はいいわ。大丈夫。シェンク様はちゃんと姉上の事を守ってくれるわよ」


「そうね。少し気が軽くなったわ。ティラの事も皇太子殿下は守ってくれるわよね」


  だといいのだが。その言葉は飲み込んだ。スーリとしばらく取り留めのない話をしたのだった。


  夕刻になりスーリは自室に戻っていった。シャンティラはほうと息をつく。後半月もすれば、スーラ公国に嫁ぐ身だ。スーリはシャンティラと兄弟達の中でも一際仲が良い。スーレイが夕食を持ってきた。ハミールというプツプツとした穴が開いたパン状の主食とサルーナというスープだ。


「……スーラに行ったらこれらも食べられなくなるわね」


  一人で呟きながらハミールをちぎって食べた。サルーナもスプーンで口に入れる。素朴だが美味しい。この国では穀物類や野菜類は貴重だ。なので肉類と乳製品の方が生産数は多い。シャンティラはスーラ公国に行った後もイェラース国の食物類や他の特産品を入手しやすいように父に頼もうかと考えた。向こうの大公陛下にお願いしてもいいが。色々と考え込みつつも夕食を済ませたのだった。


  翌朝、スーレイや侍女達に起こされる。顔を洗い、歯磨きもして。髪に香油を塗り込んでブラシで梳いたりもした。その後、薄い布地の衣服を着て軽くお化粧もする。身支度ができると早速、父王の執務室に行く。

  ドアの両側に立っている見張りの兵士に声をかけた。


「……あの。父上にお話があるの。そのように取り次いでもらえないかしら?」


「……わかりました。少々お待ちください」


  兵士の一人が答えてくれる。そのまま、取り次に行く。少し経って彼が戻ってきた。


「陛下が良いとの事です。お入りください」


「ありがとう」


  お礼を言って執務室の中に入った。ドアを先ほど取り次いでくれた兵士が開けてくれる。スーレイと二人で父王の執務机の近くまで行く。他の侍女たちは廊下で待機だ。


「……む。シャンティラか?」


「……ええ。父上」


  父王が気付いて書類に向けていた顔を上げた。


「それで。お前から来るのは珍しいな。どうしたんだ?」


「あの。私がスーラ公国に嫁いだ後も。こちらの食物や特産品を送っていただきたいと思って。それをお願いをしに来ました」


「……何だ。そんな事か」


「……え。いいんですか?」


「いいも何も。スーラ公国にお前が嫁いだら。あちらの大公にこちらの特産品などを交易で売りつけねばと思っていたところだ」


  その話を聞いたシャンティラは驚いて目を開いた。父王はからからと笑う。


「……まあ。そういう事だ。他にはないのか?」


「そうですね。スーレイ達。五人程の侍女も連れて行きたいのですが」


「わかった。それは儂からも言って打診してみよう。お前からもスーラの皇太子に言ってみろ。なあに。手紙でそれとなく頼むのが一番いいだろう」


「わかりました。お願いしてみます」


「ふむ。じゃあ、お前からの頼み事はそれくらいか。もういいかな」


「……ええ。お忙しい中、ありがとうございました」


  そう言うと父王はにっと笑った。「また来てもいいぞ」とも言ってくれるが。シャンティラは曖昧に笑うに留めたのだった。


  部屋に戻るとスーレイがアイスティーを用意してくれた。コクリと飲み、ふうと息をついた。涼しい風が吹く。今は雨季に入ろうとしている。すぐに雨が降り出したのだった。


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