5話 発見は唐突に
戦闘シーン書くの苦手っす
ワイルドボアが住むという森の中、俺の大声が響いていた
「やっぱり納得いかんッ!」
「うるさいッてめえのせいで一晩こっちは森で過ごしたんだぞ!」
ギルドの恒常クエスト、「畑を荒らすワイルドボアの駆除」を魔剣を投げることによって何とかクリアした。対象が柔らかいほど生命力を使わないで済むらしく「あんな魔物、アイアンワームに比べればパンに等しいわ」とは魔剣の言葉だ。
なんとか仕留めたワイルドボアを引きずりながら魔剣と言い争っている。
今回の非はまあ、俺にもある。
魔剣の『挑発』でワイルドボアの気をこっちへ向けて、いざ魔剣を投げたところまでは良かった。
ただ、誤算はワイルドボアが想像より素早かったという事だ。
「外したッ『取り寄せ』!」
「また外したッ『取り寄せ』!」
「ちょこまかとッ『取り寄せ』!」
そんな事をやっているうちに魔剣がキレた。
「貴様ァ! 1度のみならまだしも何度も何度も投げるなぁッ!」
これは俺が悪い。
ただ、大人げないのがワイルドボアに何とか命中した後、俺から余計に生命力を持って行ったコトだ。
おかげさまでその場で俺は気絶し、気付いた頃には朝だった。もちろん朝飯も食えていない。
一晩中、地面の上で寝たせいで服に土が付きまくっている。
「ここらへんはオオカミも出るんだぞッ!? ワイルドボアの血の臭いに釣られてオオカミが来たらどうしてたんだ! 俺まで死ぬところだ!」
「知った事か! 私を投げるオマエが悪いんだ! 剣を使うなら切り伏せればよかろうッ!」
「切ったらそれこそ俺が死ぬだろうが! そもそもお前が生命力を吸わなきゃ済む話だろうが!」
「仕方なかろう! 刀身が勝手に吸ってしまうのだから!」
「じゃあやっぱり投げるしかないだろうが!」
「ぬう、やっぱり納得いかん……!」
途中、通りすがりの馬車に頼み込んでワイルドボアと一緒にエンドルへと運んでもらった。
このままエンドルまで連れて行くのは中々重労働なので助かった。
何はともあれ、初のクエストを達成だ。
馬車に降ろしてもらった後は、ギルドにワイルドボアを持っていくだけだ。
街の入口であるここからギルドまでワイルドボアを引きずっていくのは少々手間がかかる。馬車にはギルドに報告をしに行きたいと言ったのだが、随分と遠くに降ろしてくれたものだ。
「しかたない、ここからは自力で行くか」
仕方なくギルドに向かって歩こうとした時だった。
「おい、兄ちゃん。ギルドの解体所はそっちじゃねぇぜ?」
ガタイの良いおっちゃんが声をかけてきた。
「おめえさん冒険者だろ? そんなもの持ってどこ行こうってんだ?」
そういっておっちゃんがワイルドボアを指さす。
「あれ、ギルドに持ってくんじゃないのか?」
「おいおい考えてみろ、町の中心にある冒険者ギルドに魔物の死骸を集めてみろ、異臭騒ぎで大変だぜ?
そういった現物は解体所で解体してそのまま売っちまうんだ」
そういっておっちゃんはここら辺では大きめな、倉庫の様な建物を指さす。
「へぇ、知らなかった」
「てぇことはお前さん駆け出しかい。教えてやる、ついてこい」
それにしても危なかった。このままこのおっちゃんに指摘されずにギルドまで持って行っていたら「剣と喋る + 非常識に猪の死体をギルドまで持ってくる」というヤバイ奴として街に居られなくなる所だった。
「どれ、持ってやるよ」
そう言うとおっちゃんは俺が引きずってきたワイルドボアを軽々と持ち上げた。
このおっちゃん何者だ!?
「へえ、なかなかの大物じゃねえか。駆け出しにしてはよくやったな」
黙っておっちゃんについて行く。
「あれ、入口はあっちじゃないのか?」
俺達が到着する前、冒険者が入って行った大きな入口をおっちゃんが通り過ぎた。
「ん? いいんだよ、ちゃんとついてこい」
そのままついていくと建物の裏、大きく開いた搬入口のような場所へと着いた。
荷馬車が何台も停まっている。ここはいわゆる関係者以外立ち入り禁止なんじゃないだろうか
「おっちゃんについて行って怒られやしないか」と俺がキョロキョロしていると案の定、若者が俺達に向かって走ってきた。
「親方ぁ! 昼休憩やっと終わったんですか!」
「親方ぁ!?」
俺が見ると、おっちゃんはニヤニヤと笑っている。
「スマンスマン、昼飯の帰りにこのにいちゃんを見つけてな、案内したって訳だ」
親方と言っていたしあの人は弟子だろうか、おっちゃんが弟子に弁解している
「俺の名ぁハンスだ。一応、ここ冒険者ギルド解体所の主任な? にいちゃんは名前はなんていうんだ?」
「ジン……だけど……? え、主任!?」
目の前にいる人物の意外な役職に呆気に取られている俺をおっちゃんが楽しそうに見てる。
「ククク……ワイルドボアをわざわざ持ち帰って来るなんて最初から駆け出しだとは思っていたがな。そんなに驚くか」
仕方ないだろ?おっちゃんは「主任」元労働者は役職に弱いんだ。
でも冒険者ギルドの関係者というならワイルドボアを持ち上げる腕っぷしも納得だ。
「この街で俺の顔さえ知らないっていうと、そりゃ駆け出しだろうよ……ハッハッハ!」
笑うだけ笑うとおっちゃんはさっさと奥に行ってしまった。
それから、あまり見ていたく無いワイルドボアの解体ショーを見せられ、そのまま素材の買い取りについて相談が始まった。
「駆け出しだし、大サービスして100オンスだな」
ワイルドボアの血と油の臭いで胃液が昇ってきている俺におっちゃんは金額を提示した。
「100オンスだって? 薬草10束分の価値しかないのか?」
「ワイルドボアは身も臭ぇし、革も牛革より弱い。誰も欲しがらねえのさ。他の冒険者は討伐の証の耳だけ切り取ってそのまま放置してきちまってるぜ?」
なんだって? つまり俺は耳さえ切ってくれば済んだものをたった100オンスの為にこんな苦労してたっていうのか?
「ほれ、コイツは耳だギルドに持ってけ、換金して貰える」
そう言っておっちゃんが俺の前に置いたのはワイルドボアの耳。
くそぅ、これだけでよかったなんて。
報告のためにギルドへ続く大通りを歩く。何はともあれこれで何とか金は手に入れられる、何とか生きていくことが出来るという訳だ。
「どうも! 昨日の確か……ジンさんでしたね? もう戻られたんですか? お疲れ様です!」
ギルド受付には昨日と同じ受付嬢が居た。こんだけ疲れて帰ってきたからか、ねぎらいの言葉が胸にしみる。もしかしたら受付嬢に惚れている奴もいるんじゃないだろうか。
「ワイルドボアですか! 最初のクエストですよね……スゴイです」
「あ、ああ。すごい……のか?」
ほとんど魔剣のおかげだし、褒めてもらっても複雑な気持ちだ。
「それでは報酬をお渡しします。……500オンス、確かにお渡ししました!」
やっと……やっとッ! 金が手に入ったぁぁぁ!
嬉しさで叫んでしまいそうだ。 取り合えず今夜は呑もう! そんな気分だ!
俺が嬉しさで心ここにあらず、そんな時だった。
「ほう、中々の魔力量を持っている奴が居るな」
魔剣がそういって微かに光った。
(おい、それは本当か?)
声を押し殺して魔剣に聞き返す。
「なんだ、やけに食いつきがいいな。ああ、居たとも」
魔剣が認める程の魔力の持ち主であるなら、相当な冒険者に違いない。そうなら魔剣を売ることが出来るかもしれない。こんなにいい事が続いていいのだろうか。
(それで、どいつなんだ? その魔力が高いヤツって)
「もう出て行ってしまったようだn おい、急に走るんじゃない!」
「もう出て行って」その言葉を聞くやいないや、俺はすぐさまギルドの表へと出た。 だめだ、大通りは人が多くて誰だか分からない。
「おい、どこにいるか分かるか? 顔は?」
「これだけ人が多いとな、顔も見ていない」
ちっ、肝心な時に! せっかく魔剣を押し付けるチャンスだったのに!
だが、やるべきことは決まった。
「張り込みをするぞ」
サブタイトル回収遅くね? ってあなた、
私もそう思います。