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異能の目を持つので魔王に嫁ぎました  作者: りすこ
余聞

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骨の独り言 ―あなた達を思えばこそ

スケル視点の話です。語尾のカラカラは、笑い声です。(笑)と同じ意味になります。

 自分で言うのもなんですが、私は結構、お節介だと思います。根っからの世話好き。それは、私がガイコツになる前からそうでした。


 とある農村で生まれた私はのほほんと、畑仕事なんかをしていて暮らしていたわけです。そこへ、猪が畑を荒らす所業をしまして。まぁ、村人全員、途方に暮れました。だから、私は猪に罠を作って仕掛けました。


 こう見えて、手先は器用なんですよ? そしたら、びっくりドッキリ。なんと、猪が罠にかかってくれましてね。そりゃあ、喜ばれましたよ。


 そんな事をしていたら、隣の村から猪の罠の作り方を教えてくれと言われまして。世話好きの私は、ほいこらと隣の村にいきました。


 今から思えば、武器職人の発端はあれだったんですよね。

 あ、いい忘れてましたが、私は勇者の前に武器職人だったんですよ? だから、武器好き。武器ラバーなのです。


 いろんな人を助けて、時には武力で分からせないといけないクソ野郎もいましたので、武器を作って対抗したりしました。金ばっかりむしりとる領主とかって、死んでしまえと思いますしね。カラカラ。


 そんな私ですから、案外、人からは好かれました。特に子供とお年寄りには人気だったんですよ?


 武器を扱うために、鍛練はしていましたし、子供に剣術を教えるのも楽しかったです。


 まぁ、名前が同じなので「勇者クラウスの再来」だって言われて、ほいほい魔王の森にきた私ですから、そんだけお人好しだったんです。



 そんな私ですが、救えない人が三人いました。


 魔王様とミャーミャさんと、コモツンくんです。


 まぁ、森に来たときは魔王死ね。とにかく殺すと思っていたので、彼自身を見ることはあまりなかったです。今も彼のことが好きかと言われたら複雑ですし。へたれクソ野郎とは思いますがね。カラカラ。


 でも、ラナ様が来てくれて、彼は変わりました。ミャーミャさんも。それはラナ様に密かに感謝していることです。照れ屋なので言いませんけど。カラカラ。



 そうそう。そんなクソッタレ野郎とラナ様がなんと、新婚旅行に行ったのです。魔王様ってば、初っぱなから飛ばさないといいんですけど。あの方、子供っぽい所ありますから。心配です。ラナ様の体が。


 だって、見ました? 旅行に出かける日のあの爛々とした目。もう、大好きなラナと一緒におでかけ、ルンルンってのが丸わかりですよ。


 ちゃちゃいれ担当の私や、温かい目で見つめすぎているミャーミャさんもいないですしね。浮かれる気持ちも分からなくはないですが、デレデレすぎですよ。自重してくださいって。


 はぁ……この人を倒しにきたのかと思うと、勇者なんてやってらんないですね。全く。



 そんなこんなで、嫁馬鹿とラナ様が旅行に行ったのですが、私は手持ちぶさたになってしまいました。暇をしていたんです。からかう相手もいないですし、出かけることもありませんから。


 なので、武器庫(じぶんのへや)から、ノコギリなどを持って私はある提案をミャーミャさんに言いました。


「ミャーミャさん、森を整備しましょうか?」


 彼女はいつものように洗濯とかおうちのことをやっていました。キョトンとした三つの目が瞬きをして、私を見ています。


「森を整備ですか?」

「はい。魔王は怖いものではなくなりましたし、森が鬱蒼(うっそう)としているのもどうかと思いましてね」


 私はノコギリ、トンカチと一通りの大工道具を持ってカラカラ笑いながら言いました。


「不要な木を切っていいですか?」


 その言葉にミャーミャは、そっと目を伏せました。ミャーミャさんの話によると、この森は”彼女”とやらの意識が溶け込んでいます。どうやらミャーミャさんは”彼女”に対して思うことがあるようなので、念のために聞いたわけです。森の木を切ることは、イコール”彼女”自身を傷つけることになるわけで……ミャーミャさんとしては複雑なんでしょう。


 なので、お伺いを立てにきました。


「森の木を切って、子供の遊具を作りたいのですよ。ほら、ここは遊び場がないですし」


 こんな場所で遊びたいかって言われると微妙ですが、きっとそのうち生まれるお子さんも森に入るでしょうし。その時に、子供の好きそうなものがあれば、少しはマシでしょう。


「ダメですか?」


 首を傾げて言うと、ミャーミャさんがクスクス笑いだした。


「遊び場ですか……いいですね。はい。どうせ、ただの木なんで好きなようにしてください」


 “ただの木”と言った時のミャーミャさんの切なそうな顔。何か言いたかったですけど、私は言葉を飲み込みました。


「じゃあ、バッサリいっちゃいましょう」


 その痛みは彼女にとって大事なものだと思うので。



 そういうわけで、遊具作りのための伐採が始まりました。



 ギャーッハッハッハッ!


 ―ギーコギコギコギゴ!


 嗤う木を容赦なく切ります。ええ、切ります。なんでしょうか、この感情……積年の恨みを晴らしてやるぜ! と言えば宜しいんでしょうか。物凄く愉快です。


 ふふっ。はーっはっはっはっはっ!


 あ、愉快すぎてつい笑いが。魔王の高笑いってこんなカンジですかね? さて、続きをやりましょうか。


 ギャーッハッハッハッ!


 ギーコギコギコギゴ


 ギャーッハッハッハッ!


 ギーコギコギコギゴ


 ギャッ……


 よいしょっと。


 森の木は斬り倒すと喋らなくなりました。それをなんの感情もなく見つめ、次々と斬り倒していきます。


 楽しすぎて、切りすぎたのはご愛嬌です。カラカラ。



 子供は揺れるのと、高いところが好きですからね。ブランコと、滑り台は必須です。あぁ、でも、滑り台は滑る部分をヤスリとかけないといけませんね。ささくれだっていたら、怪我をしますし。


 ふと、手に持ったヤスリを見つめ、首をかしげます。


 ……ヤスリでどうやって魔王を殺すんですかね?


 武器の手入れ用でしょうか? それとも頭部にゴリゴリかけてハゲさせるんでしょうか。


 ハゲ魔王。


 ちょっと面白そうです。今度、やってみましょうか。どうせ、今頃、デレッデレなんですから、ハゲさせても問題ないでしょう。


 新品のヤスリをこっそりポケットにしまって、私は遊具作りを再開しました。



 トントン。

 ギーコギコギコギゴ。


 もしかしたら。

 いえ、ほぼ確実に。

 二人の子供を見ることは叶わないと思います。


 まだ見ぬ子供がはしゃぎながら、この遊具で遊んでいる姿を想像して、私は遊具を作り続けました。



 遊具を作っている場所はコモツンくんがいた花畑の近くです。彼には何もできませんでしたから……せめて、この場所に行きやすいように、道も作りましょう。


 公園の名前はコモツンですかね。それともホールケーキ公園でもいいですね。ネーミングセンスはないので、今度、ラナ様たちと相談しましょうか。


 トントン。

 ギーコギコギコギゴ。



「そうだ。ついでに、アーチでも作りますか?」


 すっかり大工仕事が楽しくなった私はある日、ミャーミャさんに言いました。


「アーチですか?」


 ミャーミャさんはやっぱり、大きな目をキョトンとさせて、こっちを見てます。


「これからもモンスターたちは、ここに運ばれてくるんですよね? それをミャーミャさんは受け取り続ける。なら、ここは怖い場所ではないですよーと印象づけるのにいいアイディアだと思ったんですけど」


 ダメですかね? と首を傾げるとまた、ふふっと笑われた。


「アーチなんて少し大げさですよ」

「そんなことないですよ」


 そう言って、私は指を一本ずつ立てながら、口を開く。


「魔王様は、魔王。ラナ様は、聖女。私は勇者。だったら、ミャーミャさんは”女神”ですよ」


 心底、そう思っているんですよ?と声にだす。そう言うと、ミャーミャさんは少し驚いて照れたように笑う。


「そんな女神様だなんて……」

「いやいや、ご謙遜を」


 私はこほんと、わざとらしい咳払いをして、姿勢を正す。



「憂いのあるモンスター達を導く。それって、まさに女神ですよね」



 そう言われる未来がくればいい。そう願って。



 ミャーミャさんはやっぱりまた驚いて、恥ずかしそうに笑った。



 なので、遊具を終えたら女神様アーチを作ろうと思ってます。



 ……たぶん、これは未練なのでしょうね。どうあがいても、私は皆さんより先に逝くと思うので。


 彼らの為の何かを残したい。


 できれば、彼らが笑うようなものを。


 今のうちに。



 だって、ほら、私はお節介で、世話好きですから。カラカラ。



 トントン。

 ギーコギコギコギゴ。



 そんな大工仕事の充実させていると、ラナ様たちが帰ってきました。


 はぁ……もうなんですかね。魔王様、ピンクなオーラを出しすぎですよ。充実してきたぜ、お前らがいないからな!というのが見え見えですよ。


 これは、ハゲさせるしかありませんね。

 ヤスリの出番でしょうか。


 そんなことを考えていたら、なんとまぁ、お子さんができたというじゃないですか! いやぁ、めでたいですね。

 どんだけ頑張ったんだよってツッコミたいですね。カラカラ。


 これは、ツッコまなければ。ええ。久しぶりにいじり倒しましょうかね。カラカラ。


 なので、魔王様のお部屋にお邪魔しました。あぁ、大丈夫ですよ。私は魔王様と違って空気を読みますからね。きちんと、魔王様がラナ様の部屋を出るのを見計らって来したよ。


 ――コンコンコン


 たぶん、開けてはくれないので、そのままドアを開けました。


「失礼します。乾杯しに来ましたよ」


 こっちを見た魔王様は、いつものように舌打ちしそうなくらい嫌な顔をされました。


「……お前とはもう酒を飲まんと言っただろ」


 うんざりしながらも、いそいそとワイングラスを出す魔王様。口と行動が全く合ってませんよ。浮かれすぎですってば。


 魔王様はワイングラスを私に渡して、ワインを注いでくれます。手酌じゃないんですね。大盤振る舞いじゃないですか。


「ありがとうございます」


 グラスを掲げて息を吸い込む。


「魔王様の脱どうっ、もごっ」

「やめろ。それ以上、言うな」


 おやまぁ、口を塞ぐなんて、隙をつかれました。ちっ。


「じゃあ、これならいいでしょう?」


 私は再度、グラスを掲げて息を吸い込みます。


「パパになる魔王様に乾杯!」


 どうですか?とニヤニヤ笑いながら魔王様を見て、びっくり。なんですか、その乙女のような照れ顔は。


「……それならいい」


 ツンとそっぽを向く魔王様に呆れます。まぁ、子供ができるって感無量でしょうからツッコミませんけどね。


 静かにワインを口に入れます。いい香りですね。白ワインもいいものです。本当はビールとかがいいんですけどね。


 ちらっと魔王様と見ると、ワインをぐいぐい飲んでます。ええー……ワインってそうやって飲むものでしたっけ?


「パパになって嬉しいんですか?」


 思わずツッコむと、デレッとだらしない顔の魔王様が嬉しそうに言います。


「あぁ、そうだな」


 変ですね。私まで嬉しくなってきました。


「魔王パパは子育て大丈夫なんですか?」

「大丈夫だ。本は読む」


 うわー……一番、危ないパターンですね、これ。


「本を読むのもいいですけど、練習しませんと。ほら、このクッションを赤ん坊だと思って抱いてみてください」

「……こうか?」

「違いますよ。生まれたての子供なんて首がすわってないんですよ。頭を支えて、こうですよ」

「……こうか?」

「不器用ですね。大丈夫ですか? 魔王パパ」

「……これから練習する」


 なんとも頼りない新米パパに、特訓しなければと、お節介な私は思ったのです。


 それから、魔王パパとボトルを四本ほど開けました。ピッチ早いんですもの。魔王パパ。


 ぐてんぐてんになった魔王パパは、ボーッとしながら、にへらっと笑います。うわっ。怖いですよ、なんなんですか。


「お前が来てくれてよかった」


 は?


「俺が変わったのは、ラナのおかげだが、お前のおかげでもある。ありがとう、スケル」


 …………。


 ははっ。嫌ですよ。急にそんなこと言って。名前までこんな時ばっか呼んでくれちゃって。泣かせたいんですか?


「当たり前じゃないですか」


 もう皮膚も何もないというのに、目の奥が熱い。



「私は魔王を倒しに来た勇者ですよ?

 あなたの中の魔王は倒されたんですよ」



 そう言うと、魔王様はふっと笑った。


「そうだな……」


 感慨深げにそう言うと、そのまま眠ってしまった。


 全く。新米パパだというのに、はっちゃけすぎですってば。


 私は肩でため息をついて、寝入った魔王様に囁いた。



「魔王様のこと、案外、私は好きですよ」


「だから、幸せになってくださいね」



「私がいなくなっても、泣かないでくださいよ」



 寿命の話はしなかった。幸せな空気に水を差したくはなかった。



 私は魔王様をソファーに寝かせて、毛布をかけて部屋を出た。



 自分の部屋に戻ると、日課にしている日記を書く。書き終わると日付を確認した。


 もし、寿命が100年なら。


 残りはあと、十一ヶ月を切っていた。


すみません。時間軸を入れていなかったので、四章の終わりに時間を入れました。


次はラナ両親の余聞になります。

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