高原から
舞い落ちた木の葉を取り除き視界をクリアにする。起き上がりあたりを見渡すも木の葉を落としたであろう持ち主は見あたらない。周囲にあるのは低い草木のみ。この広い高原で一番高い存在は自分だ。
風が吹く。きっと風が遠くの木の葉を運んできたのだろう。
私はカメラの設定を再確認し目的のものが風を捕まえてやってくるのをひたすら待つ。
強い風が吹く。木の葉を運んできた風よりもさらに強い。シャッターを切るボタンにかかる指に自然と力が入る。
小さい鳥の群が一斉に飛び立ち、その群をめがけて風を切る羽音が高原に響いた。
飛び立ったオオタカは目の前で獲物をつかみ取り、飛び去る小鳥の群を横目に悠々と緑のカーペットに降り立つ。地面を赤色に汚しながら食事にありつく姿は警戒に溢れつつも高貴さに満ちあふれ自らがこの高原の王であるという威厳に満ちていた。
圧巻であった。長年追っているが何度見てもあの姿に心が痺れずにはいられない。
そこで私は緊張と畏れ、そして感動のあまり、己の体が固まっていたことに気がついた。ボタンにかかる指は数秒前から動いていない。
また撮り逃した。だがこれでまた見ることができる。知人へ電話をかけながら片づけをする。報告の声色は恋をしているかのようだと後日友人は言った。
書いた後、後輩から「これ緑ですか?」「画用紙一枚に収まります?(イベント時は画用紙に書いて壁に貼る。今回は後輩に代筆をお願いした)」「こんな文章を書いた人とはとても思えない(人間性が)」等となじられましたが私は元気です。