私がみつけたもの
少しだけ改稿(4/21)
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蒼い、青い月の夜。僕は彼女と出会った。
どれだけ時が経とうが、この出会いは、生涯、忘れることはないだろう。
そして、僕が生き続ける限り、この昔話を語り継がせる予定だ。
誰にも信じられずとも、何度も救ってくれた彼女のために。
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話に入る前に、予め伝えて置くべき事がある。この物語は実際にあったことだ。
けど、全部が全部、本当に起きた話なのかと問われると躊躇ってしまう。何故ならば、彼の身に起きた出来事は、信じ難いほどに不思議な出来事だらけだ。こうして筆を執っている私自身でさえ、ソレを偶然見つけるまで法螺話だと思っていた彼の昔話だ。
詳しく聞こうにも彼はいない。少し前に旅立たれてしまった。
こうなる前に真面目に聞いとけば良かったと後悔している。
私が見つけたソレは、それほどの物だった。
そのソレと言うのが、沢山の古い日記である。
読んで見ると、曽祖父が、丁度、私ぐらいの歳に書き記したものだった。
その頃の曽祖父はとても几帳面な性格だったのだろうか、それとも、それぐらいしかやる事が無かったのだろうか、その日にあった出来事を毎日のように書いてある。朝食の献立、よく通う大衆酒場の様子、そこで出会った友人との会話の内容、その時の心境とか仕草とか、どうでもいいことまで含めて詳細に書いてある。
それだけでも、昔の庶民がどのように暮らしていたかが分かる貴重な文献だ。
が、曽祖父はそれ以上のものを残していた。
幼い頃の私に言い聞かせた曽祖父の昔話。
曽祖父がミス・ヴァンパイアと、その友人達と共に解決した数々の冒険奇譚だ。
ミス・ヴァンパイア。
彼女の名前を見つけた瞬間、胸が早鐘のように踊った。黒いパイプ煙草と黒い杖を肌身離さず持ち歩き、御伽噺に現れる吸血鬼のように血液を好むミステリアスな彼女は、曽祖父を助けたり、導いたり、裏から手を回したりと、ほぼ全ての話に関わっている。
そのページに書かれていた彼女も凄まじい。
曽祖父が巨大な敵に苦戦している最中、何処からとも無く颯爽と現れ、瞬く間に倒してしまうのだ。
その滅茶苦茶な活躍っぷりが法螺話だと思っていた一因だけど、この日記には聞いた通りの姿が書いてあった。
勿論、彼女だけではない。友人達の活躍も残してある。
ガンスリンガーの猫人。
無口だけど心優しい機械人形。
知らない事がないと豪語する妖精の子供。
毒術に長けた女王の双子の弟。
従者であり秘書でもある犬人。
その友人達はミス・ヴァンパイアほどではないけど、不思議な技術を持っていた。
気付けば、私は日記を通して、曽祖父達の跡を追っていた。
もっと、ミス・ヴァンパイアのことが知りたい。
もっと、その友人達のことを知りたい。
もっと、曽祖父のことが知りたい。
そんな気持ちが私を動かす。
年数が書いていないため、どの日記が一番古いのか新しいのか分からない。何故か日本語ではなく古い英語で書かれてあるページが多いため、何と書いてあるのか分からない。不可解な用語があって分からない。
分からないことだらけでも、この日記は私を突き動かす。
これから投稿して行く物は、現時点で私が調査と翻訳が終わっている一部だ。
誤字脱字、意味不明な言葉は多々あるだろう。きっと、矛盾している言葉もあるだろう。無い筈が無い。推敲してから投稿すると言っても、今まで小説とか書いたことがない私が、日記通りの展開で書いたり、昔話を思い出しながら書いているのだ。
そう思うと恥かしくなる。
でも、自己満足で終わらせるには勿体無い。
他の人にも知って貰いたい。
投稿することにより、彼女達の子孫に出会えるかも知れない。
ひょっとしたら、私が知らない曽祖父達の話を聞くことが出来るかも知れない。
そうなることを私は心から願っている。