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 そんなこんなで一人増え、ヘルン到着が午前十時半。一昨日振りに職場へ顔を出し、早速受付の看護婦に挨拶する。

「おはよう。娘の容態はどうだい?無事に一般病棟へは移れたそうだけど」

「あ、エッセ先生。御安心下さい、経過は良好ですよ。今は奥様ともうお一方、眼鏡の男性が面会にいらしています」

「眼鏡……もしかして、ぽっちゃりめでちょっと根暗な感じの?―――ああ、やっぱり。僕の従兄弟のアルゲニブだよ、前にチラッと言った」

 そう言えば厭人性の割に彼、何故かうちのナナちゃんを気に入っていたんだっけ。自由業とは言え、遠路はるばる御苦労な事だ。 

「そうだ。もし在室中なら、院長と今後の予定について相談したいんだけど」

 敵の襲撃は日々苛烈さを、加えて容赦の無さを増してきている。流石にこんな状態で業務に復帰するのは困難だ。

 壁の勤務表を確認した看護婦は、あら、小さく呟く。

「院長先生、今日はお休みされているようですよ」

「あ、そうか」

 仕事熱心な彼女が、月に一度有給休暇を取得する日。それが丁度今日だったのをすっかり失念していた。

「お急ぎでしたら、緊急招集用の携帯に掛けられては」

「いや、流石にそれには及ばないよ。実は今、例の調査でちょっとトラブっちゃってね。もう一、二日休みたい旨を伝えたかっただけなんだ」

「でしたら特に問題ありませんよ。エッセ先生はGW中不在と言う事で一昨日、院長先生から全職員へ通達がありましたから」

「おや、それは願ったり叶っただね。皆にも後で是非お礼しないと」

 早速愛娘への面会希望を告げ、三階の個室へ。病室の前へ差し掛かった所で、ガラガラッ。内側から扉が開いた。

 出て来たのは、車椅子に乗った巨躯の男子大学生。後続には、相も変わらず不健康そうな従兄弟。彼は仇敵を発見するなりゲッ!?恐怖を全面に後ずさった。

「お、おいプロキオン!ナナちゃんの病室にヤクザなんか連れて来るな!?」

「あぁ?俺が見舞いに来ちゃ悪ぃってのか、手前」

「ひっ!」

 鼠も斯くやの機動で盾にされた団長は、腰痛も構わずあっけらかんと笑う。

「よう、ゴンザレス。本日の爆弾殿の御機嫌は如何だ?」

「一昨日よりは大分マシになったぜ。これから診察を受けて、問題無ければ明後日にも自宅療養だとよ。で、そっちのアルビノの兄ちゃんは誰だ?―――へー。キムお前、俺等以外にも友達いたんだな」

 宜しく。こちらこそ。双方社交的に腕を伸ばし、挨拶と握手を交わす。

「んじゃオッサン。そろそろ俺等は失礼させてもらおうぜ」

「お前等、くれぐれもナナちゃんに失礼の無いようにな!」

 そう言い残した対照的な二人を見送り、僕は率先してドアをノックした。 



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