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―――ははっ、こんな高級レストラン初めてだ。いやー、緊張するぜ。
太陽は肩を上下させ、キョロキョロと店内を窺う。
―――しかも今夜のために、一張羅のタキシードまで仕立ててもらってさ。本当に良かったのか?
秘密めかした問い掛けに、半死半生だった表情筋で満面の笑顔を浮かべる。滾々と溢れる感情。外出先でなければ、加えて原因が眼前に無ければ、きっと歓喜から無様な狂乱の舞を演じていただろう。
この記念すべき日のため、当然料理は店の最高級フルコース。しかし正直な所、味など殆ど判別不可能だ。この時間が愛おし過ぎて、料理を咽喉へ押し込むので精一杯。途中で手洗いへ中座したのも、余りの多幸感に因る眩暈のせい。なのに、
―――……様、どうぞ。
―――お、悪いな無理言って。
カードで会計する隣で、彼はオーナーから店のパンフレットを受け取った。理由を聞かされた瞬間襲う、墜落にも似た錯覚。何故、何故、何故……?




