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 清掃を終えた秘書が下がり、では質問を変えます、改めて口火を切る朱鷺さん。緊張気味な彼女に対し、ハプニングも何処吹く風。最高責任者は冷静そのものだ。

「『第六指事件』の遺族の一人、探偵のロバート・クラピト氏。勿論覚えていらっしゃいますよね?」

「ええ。幾ら親類縁者から放逐した所で、娘な以上『あの男』の愚行は一生付いて回る。しかし、彼が何か?」

 膝上の手を組み替える。

「僕達を恨む彼が、罷り間違ってもうちの患者な筈がありませんし」

「行方不明なんです。三ヶ月前、ユーリさんの事件の直後から。ですが」

 卓上の写真の縁を叩く。

「捜査の結果、我々はこの不審者こそが捜索中のクラピト氏ではないか、と言う結論に達しました。彼は事件の重要参考人です。早急に保護する必要が」

「―――いや、まだそうと決まった訳じゃない」

「キム君?」

 また痛み出したのか、大学生は側頭部を押さえる。

「ですが仮令人違いでも、取り敢えず捕まえてみない事には」

「確固たる証拠が無い現状、捜査令状は下りない。大人しく結果を待て、だろ。院長先生?」

「はい、また明日にでもお越し下さい。尤も、可能性は低いと思いますがね」

 さて、腰を浅めに掛け直す。

「聴取は以上ですか?今日は週一回のミーティングランチの日でしてね。まあ」患者を窺い、「昨日と違い、遅刻しても別に問題は無いのですが」

「あ、なら最後に一つだけ」

 挙げた手で以って彼女の両手、薄手の革手袋を示す。

「初対面の時から気になっていたのですが、それ……矢張りその、お父上の暴力が原因で?」

「正解です。日常生活上は支障無いのですが、如何せんギョッとする見た目でしてね。詮索されるのも煩わしいので、自宅で寛ぐ時以外はこうして隠しているんですよ」

「へー、道理で俺にも見せてくれない訳だ。なあ、一回でいいから脱いでくれよ。絶対驚かないからさ」

「駄目だよ。幾ら兄さんでも―――わっ!?何やっているんだ、放して!!」

 折れそうな両腕で、強引に左手をホールド。そうやって無理矢理暴露されたのは、


「あ」「これは……」「………」


 かつては若干歪ながらも肌理が整い、綺麗な手だったのだろう。だが中指、並びに親指隣接の余り指を切断された上、夥しい程の古傷が刻まれたその部位は、本人の発言通り。背筋がゾッとなる程惨たらしい有様だった。



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