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「どーだ、キム。お兄ちゃん凄いだろ」「………」「何だ、そのビミョーなツラは」


 男子大学生の絶句も当然だ。画家が自信満々に手渡したのは、それ程までに衝撃的な代物だったのだから。

 ローラン病院旧館、四〇一号室。昨日とは別の、まだ綺麗な作業着姿の病人は、後方に控えた僕達へ視線を向ける。

「なあな、酷いと思わない?折角狙撃犯を激写したってのにこの反応」

「は、はぁ……えっと、六月はん。あのカメラで撮ったん?」

 朱鷺さんが窓際に据えられた三脚カメラを示すと、モチのロンだぜ、痩せこけた胸を精一杯張る。

「ユーリが絵の撮影用に使っていた奴なんだ。良く撮れてるだろ」

 その点に関しては同意だ。真上から撮影された中庭は月光の助けを借り、被写体共々昼間のようにクッキリしている。色彩こそ白黒だが、纏ったロングコートと顔面の包帯。右手に携えた棒状の物体も見事な写り具合だ。失礼。拝借した証拠写真を手にツカツカ窓辺へ近付き、早速実際の光景と見比べる刑事。

「どうやらこの男、旧館から奥の職員用駐車場方面へ向かったようやね。六月さん、この写真は何時頃撮影を?」

「確か一時位、だったかな。ああいや、ちゃんと絵も描いてたぞキム!?足音が聞こえたから偶々撮っただけで、別にお前のためとかじゃ」

「はいはい、言い訳乙」

「むー。朝一で現像しに行ったんだぞ、俺。もっと諸手を挙げて喜べよ。素直じゃない奴ー!」

 唇を尖らせながら首を抱え込み、頭をわしわし。然程不愉快ではないらしく、キム君は時折くすぐったそうに身を捩るのみで、特に振り払おうとはしなかった。

「しかし、写真まで出て来たとなると……もう一回事情を聞く必要があるわな、ここの最高責任者に」

「だね。あ、でも……」 

 お世辞にも歓迎ムードとは言えなかった昨日の会談を回顧。ましてや僕等は一般人だ。法の後ろ盾を持つ朱鷺さんと違い、門前払いにされても文句は言えない。

 憂慮を率直に告げると、まあ普通そうやろな、描いた細眉を顰めた。

「あの院長、うちらと年変わらんくせにかなりやり手って噂や。父親の件もあるし、スキャンダルの気配には敏感なんやろ。とは言え」

 カチャッ、眼鏡のズレを直す。

「シドがおらん現状、うちもあの女とサシは勘弁やわ。出来れば先生方に同席して欲しいけど、アカンかなぁ……」

「何だ何だ?皆々様、随分お困りの様子だな」

 友人を解放し、六月君がニヤニヤと僕等の間に割り込む。

「セバスに面会なら、俺が一丁話付けてやるよ。ちょっと待ってな」

 言うなり壁際のミニテーブル上、白い固定電話に手を伸ばす。内線通話を開始後、僅か一分。自慢げにグッ!親指を突き立ててみせた。




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