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「そして、あの運命のクリスマスイブの夜―――街の交番へ、一人娘のセバスティーヌが駆け込んで来たのです。複数の指を切断され、骨折した両腕にどうにか包帯を巻いた敗走兵さながらの有様で」
実父に一ヶ月間監禁され、激しい暴力を揮われた。運ばれた病院で、彼女はハッキリそう証言したらしい。早速捜査令状を携えたリア警部、当時刑事の彼を筆頭に、署員総出で容疑者宅へ。だがそこで捜査員達を待っていたのは完全に気触れた男と、風呂場で手首を切って絶命した彼の妻のみ。結局犯行立証の決定打は容疑者の寝室、三件の事件の記念品だった。そして何より、
「同じ奇形の娘の手を切り刻んだ事で、容疑者は市内唯一人の六本指になっちまった。勿論複数の殺人、及び殺人未遂で即起訴されたさ。だが如何せん完全に発狂しちまってたんでな。裁判所の最終判断で、一生郊外の精神病院にブチ込まれる事になったんだが……」
一斉に沈黙に伏す遺族達。
「俺達は未だに納得出来ねえ。親父達の命が、あんなトチ狂った男一人に弄ばれたなんざよ……」
「しかし物証は」
「あんな物、真犯人が後から放り込んだに決まっとる!被害者を、鈴さんを霊媒したうちには分かるんや。真犯人の放っとった、人間とは思えん冷酷な雰囲気……少なくともあの男とはちゃう、ってな」
またそれか。あ、でも朧気ながら意味は分かったかも。
「さっきから気になっていたけど朱鷺さん。その霊媒って言うのは」リィン!リィン!「!?鳳兄ちゃんからだ……はい、もしもし」
二、三言交わした後、事件に関する面白い物があるから至急来たれよ、だってさ、微妙な顔で携帯を仕舞うキム君。
「ったく、詳細も言わず切りやがって。ゴーイングマイウェイ振りは昔とちっとも変わらねえな」
「六月氏が何故―――ふむふむ、了解。ほんならうちらも同行した方がええかもな、シド」
「そっちは君に任せるよ。僕は雲雀さんと銀行の方を当たってみる。可能性は低いけど、手元に置けない資料を貸金庫に預けているかもしれない」
ここまで来たら自棄だ。固めた拳でパンッ!逆側の掌を打つ。
「警察の権力をフル活用して、一刻も早くロバートさんへ、真犯人の奴に辿り着いてやる」
「是非共頼むわ。と、そうなると兄ぃの足が無くなるんやな。しゃーない、下にうちの車停めてあるから自由に使て」
まだ新車やから、くれぐれも事故らんようにな。忠告を付け、豪快な下手投げでキーを貸与。
「今正午前やろ、となると……三時に病院前集合でどうや?何かあったら各班、携帯で一報入れる事」
「了解。じゃあお先に」
こうして僕等は挨拶を交わし合い、いち早く事務所を後にした。




