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―――リビド市連続殺人事件。通称『第六指事件』。


 この歴史的な猟奇殺人事件は宇宙歴七百七十六年、九月四日の深夜に幕を開けた。

 第一の殺害現場は市東地区。犠牲者は代々続く教会の主、鎮森 レン神父と妻のシスター・千花センカ

 奇しくも事件当日、結婚記念日を迎えた夫妻は二人の実子(長男雲雀、長女朱鷺)を寝かしつけ、リビングにて毎年恒例の飲酒会を催していた。未明に婚約以前よりの無二の親友、白虎会組長東堂 要氏(アリバイ確認済)の訪問が予定されていた。解剖結果からも二人は死亡当時、軽度の酩酊状態だったと判明。

 犯行時刻は午後十時頃。階下の物音に気付いた兄妹が一階へ向かい、階段下で横たわる血塗れの母親を発見。被害者が逃げるよう告げた直後、リビング方面から火の手が上がった。尚廊下を横切る際、妹を先導する兄は炎下に倒れ伏した父親を目撃している。

 屋外へ脱出した兄妹は、定刻通り来訪した東堂氏に因り即時保護。その際、氏は燃え盛る教会裏から逃走する人影に対し、所持していたリボルバーを二発発射したと証言している。内一発は現場から発見されておらず、確認が急がれる。

 夫妻の死因は複数の刺し傷に因る失血死。又燃え残った床板の一枚から『六本指の手形』が発見されており、この遺留品を以って事件名とする―――


「やっぱ文書となると長えな。頭痛くなってきたぜ」パラパラ、パタン。「特に目新しい情報も無えみたいだし、後は俺等が手短に説明しやす」

 棚へファイルを放り込みながら、二件目は十月七日で、雲雀君は語り出す。

「被害者は西地区に住んでいたシドの祖父母、葵 貞広氏と鈴さん。死因は二人共、金槌で」

 言って良いよな?確認するようにチラッ。

「……頭を一撃だった。当時こいつも同居していたが、偶々その日は部活の合宿で空けててな。危うく難を逃れたって訳さ」

「ええ。両親を相次いで亡くした僕を、祖父母は我が子同然に育ててくれました。なのに、何であんな惨い事に……!」

 爪が食い込む程拳を強く握り締めた相棒の肩を叩き、もうええ、女刑事が引き継ぐ。

「その更に一ヵ月後。三件目の被害者がロバートさんの妻、保育士のセンリ・クラピトさんや。但し先の二件と違い、彼女が殺されたんは白昼の職場。休日出勤で、遊戯室の掃除中に襲われとる。ほんで夕方、偶然雑務を片付けに来た園長が発見者や。死因は絞殺」

 成程。遅ればせながら、やっと彼等四人の繋がりが見えた。同一犯への遺族会。しかもその内三人がほぼ同い年、その上孤児になったともなれば、結束が高いのも極自然だ。でも、

「短期間での同市内における連続殺人。同一犯説も尤もだけど、一応模倣犯の可能性もあったんじゃないかい?死因だってバラバラな訳だし」

「さあな。何せ予期せぬ場所から犯人が現れちまったものだから、当時は報道規制が凄かったとしか」

 そう言えば確かに妙だ。隣街在住にも関わらず、つい先程まで僕は事件名すら知らなかった。十八年前なら既に成人し、毎朝とはいかないが新聞やニュース番組にも接していた筈なのに。そこから導き出される可能性は、「もしかして……犯人は街の有力者、だったのかい?」

「ええ。医師の先生なら、ひょっとすると噂位は御存知かもしれませんね―――ジャギー・ローラン。ローラン病院元院長にして、かつては宇宙一の外科医とも謳われた男ですよ」

「!!?」

「しかも手形と同じ奇形、宇宙に十数人しか存在しない六本多指症でした」

 殺人犯が同業者、加えて知人の父親とは……道理で昨日、雲雀君が病院へ同行しなかった訳だ。両親を惨殺した犯人の身内の顔など、遠目でも厭に決まっていた。



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