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「せ、先生!?」
黒は黒でも神父服を纏う若頭は、いや、その……、悪戯が見つかった子供みたいに頭を掻く。胸元のロザリオ、純君と同一デザインの聖具の錆も風格も、一朝一夕に顕れた物ではない。
「雲雀、君?どうしたの、その格好」
「あー、ええと……実は俺、生家が教会なんすよ。親父の援助で、一応神学校も出てて」
くしゃくしゃっ。聖水を振り掛けたのか、幾分湿った純君の前髪を撫でる。
「今朝はこいつが久々に魘されてたんで、説法と儀式を一寸。起こしちまいやしたか?」
否定すると、目が泳いでるっすよ先生、一瞬で見抜かれた。
「やっぱ変ですよね。俺みたいなヤクザ者がこんな格好」
「そ、そんな事無いよ!凄く良く似合ってる。本職に引けを取らない、いや。有資格者なら本物か」
兎に角、取り繕いつつ口端を上げる。
「雲雀君の意外な一面が見られて、今日は幸先良いよ。きっと調査も捗る」
「!?あぁ、はは、勿論今日こそ犯人をフン捕まえてやりやすよ。あ、けど……」
僅かに俯き、聖職者は数秒思案。雲雀兄?隣に移動した純君も上目遣いに窺う。
「済まねえ先生、坊主。個人的な用向きで悪ぃが、午前中は俺に付き合ってくれねえか」
「別に構わないけど、急にどうしたの?」
昨夜の夕食後の相談会では、特に予定変更の提案は出なかった筈だが。
「実は寝る直前にシド、喫茶店で会った朱鷺の相方っすね、奴から連絡がありやして。あいつには内緒で相談事がある。しかも出来れば、先生方にも同席願いてえ、と」
あの精悍な刑事さんが?警察官が初対面の、しかも余所の街の民間人に何用だろうか。思い当たる節を訊くと、全然、首を横へ。
「そもそも番号交換しているとは言え、シドが直接俺に電話なんざこれが初めてです。あいつはマル暴担当でもねえし、朱鷺の奴も最近は『安定』してんだ。俺に用事なんざ」
「『安定』?」
どうも地雷だったらしい。いや、こっちの話っす。はぐらかして足早に屋敷へ戻り始める。
「ほら、純!女将が朝飯の支度を始めてる頃だ。手伝いに行くぞ」
「あ、うん」
先行する義兄を軽く一瞥後、御免な先生、溜息混じりに肩を竦める少年。
「下手は下手なりに自覚して、誤魔化さず説明しろっての。別に隠すような事でもないだろうに」
「無視すんな、糞餓鬼!!」
「はいはい、今行く。―――ま、気になるなら今度朱鷺姉に訊いてくれ。心配性拗らせ兄貴と違って自慢にしているからさ、当の本人は」
小声で献言し、分かってるって!三度目の召集寸前、脱兎の如く坂道を駆け下った。




