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―――ああ、光だ。
住宅街を横断する、冷え切った闇。その狭間で足を止め、暖かに輝く場所へ首を捻る。
神妙に目を閉じ、聴覚を研ぎ澄ます。カチャカチャ、少々耳障りな食器の調べ。椅子を引き、立ち上がる足音。そして、厭が応にも聞こえる―――切ないまでに平穏な、愛しき人と他人の、笑い声。
圧倒的疎外感を覚えながらも、気付けば無意識に腕を伸ばしていた。あの光の中へ飛び込みたい。仮令触れた途端消えてしまう、泡雪の幸福だとしても……。
現実では五分にも満たない葛藤も、体感的には数時間にも及んだ。甘く苦しいそれを中断させたのは、ガチャリ。境界の開放だった。




