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 バタバタバタッ!!「警察だ!今の爆発音は―――坊主共、確か今朝の……怪我は無いか?」「ああ、どうにかな」


 階段を駆け上がって来たリア警部にそう応じ、腰を庇いながらヨロヨロ立ち上がる団長。尚心配げな寮生達に礼を言い、先に下階へ降りるよう促した。

「念のため警備状況を確認に来てみれば……一体何があった?」

「聞いてくれよオッサン。実は―――」

 語られる臨場感たっぷりの経緯に、さしものベテランも顔を強張らせた。腕を組み、隙間から黒煙を絶え間無く噴き出すドアをジロリ。

「そいつは危機一髪だったな。で、あるのか坊主、送り主に心当たりは」

「………」

「悪ぃな、オッサン。キムの奴、帰って来た時からこの有様でさ」

 疲労困憊で焦点の合わない副団長、その眼前で掌をひらひら。ってな訳で、言葉を続ける。

「出来れば明日にしてくれねえか、聴取。生憎俺も人の事言えんザマだが、こいつがここまで憔悴した所を見るのは初めてなんだよ」

 確かによ、鼻下と指で煤を擦り付け合う。

「キムは掴み所の無え、本気な変人中の変人さ。けどな、俺にとっちゃ唯一無二の相棒なんだ。苦しんでる時位、無理させられねえんだよ」

「フン。因みに友達思いの坊主、お前にはあるのか?こいつが恨みを買う心当たり」

 定型的な質問に、はん、鼻を鳴らす。

「少なくとも平和な大学生活の中じゃ見当たらねえな。タイミング的に言って、十中八九スピカの狙撃事件絡みだろ。現にこいつは今日、その調査のために遥々リビドくんだりまで行っていたんだからな」

「と言う事は、今夜の件は差し詰め警告か。これ以上事件を嗅ぎ回るな、首を突っ込むな、と」

 あっはっは!堪え切れず間抜け極まりない体勢で大笑う。何が可笑しい、怪訝を露にする警部。

「いや、犯人もよくよくツイてねえと思ってな。選りにも選ってこの眠れる魔人に喧嘩売るたぁ、今世紀最大の大馬鹿野郎だぜ!」

 つんつん。突然背を突かれ、肩越しに振り向くキム。一体何時から混ざっていたのか、そこには先程裏口で別れたばかりの少年が立っていた。小さな侵入者の存在に二人も気付き、誰かと思えば純坊じゃないか、ベン・リアが気さくに声を掛ける。

「両側の入口は警備の連中が固めていた筈だが、さては塀でも登って来たか?あんまり俺達公僕を困らせないでくれよ」

「ああ、善処する」

 無色の反省を示す不法侵入者へ、俺を助けに来てくれたんだな、プロキオン達は?若干生気の戻ったキムが問う。

「塀の外。先生の治療が必要かとも思ったが、あの場では置いて来るしか無かった。斥候は俺一人で充分だ」

「そりゃ勇ましい事で。鎮森の兄ちゃん、今頃きっとカンカンだぞ」

 元より覚悟の上だ。説教を想像してかフィッ、大袈裟に顔を背ける。

「まぁあれの事は一旦置いて、だ。キム兄さん、正直に答えてくれ。―――この場所は安全か?」

 すると彼は暫し逡巡の後、緩く首を横へ。だろうな、我が意を得たりとばかりに少年も頷く。 

「俺も同意見だ。敵が何故ここに来てターゲットを変更したかは不明だが、少なくともこのままここで一晩明かすのは悪手だ」チラッ。「取り敢えず離脱した方がいい。そこの足手纏いは置いておいて、な」

「ぐっ!?餓鬼が、会って早々ズケズケ言いやがって」

 甲斐甲斐しく探偵の手を掴み、俺は事実を述べただけだ、キッパリ。

「行こう、キム兄さん。リア警部は救急車の手配を頼む」

「どうする気だ、純坊?」

 すると侵入者は先程より幾分硬い、警戒を滲ませた無表情で頭を下げた。

「悪いが、幾らあんたでも教えられない。その代わり」ごそごそ。「やるよ、働き者の公僕さん」

 放物線を描き、残っていたキムの分のパンが宙を舞う。首尾良くキャッチした中年男性はビニールの中身を確かめた後、おう、相好を綻ばせた。

「サンキュー、丁度腹が減ってたんだ。有り難く食わせてもらうぜ」

「……そうか。喜んでもらえたなら何よりだ」

 視線を一度床へ落とした後、純は無言で護衛任務を開始した。




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