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「さっきの質問の意図は何だい、キム君?」「さあな」


 異能者と合流後後、早速件の売店で聞き込みを行う。結果は院長の予想通り。仕方なく狙撃犯と同じくちくわパンを五つ購入し、二週間前の行程の続きを辿る事に。

「少なくとも僕には極普通の絵画に見えたよ。純君はあの奥のイコン、どう感じた?」

 返答を待つ間に二階渡り廊下を抜け、北側の旧館へ足を踏み入れる。本館と違い、古びた建物内は相変わらず全体的に薄暗かった。

 ローラン院長曰く、ここは所謂「訳アリ」患者の入院病棟だそうだ。運が良ければ、最近不祥事沙汰を起こした政治家の顔を拝めるかもしれませんよ?彼女は冷笑でそう説明し、「―――俺も」

 え?

「上手く言えないけどあの絵、何か凄く厭だ。全然別物なのに、『あそこ』にあった奴と、良く似た感じがする……」

 奥歯を食い縛る、往診先の謎多き子供。その一端を掴もうと、『あそこ』って?努めて優しく問う。止めてやれよ、キム君が何時に無く強い口調で遮る。

「誰にだって探られたくない過去の一つや二つあるだろ。で、何処まで上がりゃ良いんだ?」

「最上階だよ。四階の、四〇二号室」

 カツ、カツ、カツ……時折の鳥の声以外、鼓膜を打つは僕等の足音のみ。以前迷い込んだ時と瓜二つの状況だ。

 罅の入ったリノリウムの階段を昇りつつ、にしても、大学生は左右を窺う。

「素晴らしい閑散振りだな。流石は要人のお忍びホテルだぜ」

「おや、気付いていたのかい?」

「まぁな」ウインク。「けど、どうやら今から会う奴は毛色が違うみてえだな」

 返答代わりに廊下を指差し、ここの一番奥だよ、先陣切って歩を進める。

 窓の外に広がるはリビド市北地区、更に向こうには青々と茂る山々。あの黒い建物が警察署かな?そう思い、覗き込みかけると同時に到着だ。隣室同様、空のネームプレートの掛かった扉前に立つ。


 コンコン。「こんにちは。約束通りお見舞いに来たよ」ガチャッ。「あれ?留守かな」


 ベッドはもぬけの殻。反対側の書き物机やクローゼット周辺にも人影は無い。長期入院にも関わらず以前同様生活臭は皆無。代わりに消毒薬のツンとした匂いが幅を利かせていた。

「うーん、行き違いになっちゃったかな。外泊中でないか、ついでにローラン院長に訊いておけば良かったね」

「あの院長の知り合いなのか?」

 少年の質問に、そうだよ、と首肯。


「彼女の異母兄なんだ。名前は」「わっ!!」「ひゃっ!?」「「っ!!?」


 突然の背後からの大声に、三人揃って吃驚仰天。特に油断し切っていた僕など、思わず床から数センチ跳び上がる有様だ。

 両手をメガホン状にして口元へ添え、廊下に立った童顔の男性。アルビノに加え、長年の闘病生活に因る蒼白い手足は、少し捻っただけで簡単に折れてしまいそうな位華奢だった。

「ははは、驚いたか―――ん?あれ、お前は……」

 手を下ろし、視線を通わせ合う事数秒。部屋の主の破顔一笑より先に、大学生が震え切った唇を開いた。


「どうして……何で、鳳兄ちゃんが………」




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