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 先んじては娘の休学届提出のため、四人で大学事務所へ。慰労の言葉と共に一通り手続きを終え、勤務先へ帰還したのは午前十時過ぎだった。

 受付に会釈後、早速四階のICU(集中治療室)へ。入院病棟は初めてらしく、アンタレス君が頻繁にキョロキョロしている。そんなに珍しいのかな?と思っていると、単に美人の女性看護師を物色していただけだった。若いなあ。

 案内先は西廊下の終点。「ナナ・エッセ」のプレートが掛かる扉前には、すらりと姿勢の良い女医が一人。おはようございます院長、早速挨拶を交わす。

「昨日、いや今日は大変だったな。そちらの厳しい君も、少しは眠れたか?」

「あんな大騒動の割にはな。けど、どうもあんたは違うみてえだな、院長先生よ」

 ファンデーション越しに透けた隈を指摘され、私も所詮年寄りだと言う事さ、素直に苦笑。

「昔は一日二日の徹夜など、ちっとも堪えなかったのだがな」米神を揉み、「こんな情けない姿、とても師匠には見せられんな。止むを得ん。婦長に言って、午前一杯は仮眠を取るか」

「御疲れ様です。あの、ところで院長。ナナちゃんの容態は」

 質問に、大丈夫に決まっているだろう、キッパリ言い切る。

「術後の化膿も起こしていないし、意識も明瞭だ。念のため夕方再度診察し、問題無ければ明日の朝にでも一般個室に移ってもらうさ」

 担当医の一言を聞き、なら一安心か、僕の背後で密かに安堵の息を吐くキム君。そこでチラッ、僕へ意味ありげな視線をやる劇団長。

「ところで先生、今日は家族以外面会謝絶なのか?俺達、スピカの大学の友達なんだが」

「僕からもお願いします、院長」ぐい。「彼は」「おい、プロキオン!?」

 異能者の細腕を掴み、上司へ深々頭を下げる。態度で察してくれたのだろう、分かった分かった、彼女は承諾した。

「以前入院した時は、まだほんの子供だったのにな。但し、患者は体力を消耗している上、先の面会者の事もある。なるべく早目に切り上げてくれ」

 先?一体誰だろう?

「ふむ、どうやら丁度終わったようだ」


 ガラガラガラ。「あ」「何だ、誰かと思えばお前等か」「純!!?」


 リア警部の斜め後ろに控えた少年へ詰め寄る形相は、宛ら悪鬼羅刹の如し。眉を顰められると同時に肩を掴み、逃がさないと言いたげに力を籠める。

「聞いたぞ手前、犯人と接触したんだってな!危険な真似は二度としねえって、俺と約束しただろう!?」

「咄嗟に身体が動いただけだ。それに」

 草臥れた革靴の先を見つめられ、へいへい、警察官は大袈裟に肩を竦めてみせた。

「捜査もろくすっぽしねえ公僕はお邪魔って訳か。全く、こう言う慎重な所はお前と真逆だな、雲雀」

「チッ。被害者の証言は聴取したんだろ?ならとっとと署に戻って、精々無意味な落書きを拵えるんだな」

 そうつっけんどんになるなよ、折角の色男が台無しだぜ。昨夜に続いての塩対応をさらりといなし、今度は学生達へ向き直る。

「で、お前等は差し詰めお嬢ちゃんの友達か?ふぅん」

 如何にも素っ気無い風でジロジロ。と、その視線が不意に副団長を捉えた。鋭い光を帯び、おい坊主、お前名前は?と問う。

「いや、どうも見覚えがある気がしてな。どちらさんだったかと思って―――キム・ニー、変わった氏名だな。ならただの勘違いだ、済まん済まん」

 豪快に笑い飛ばし、立ち去る彼。その後の相談の結果、念の為院長と雲雀君達には廊下で待ってもらう事にした。




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