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49:平穏無事

「ぶえぇぇぇぇい、気持ちいいなぁ……」


 朝っぱらから、温泉に浸かれるとは。

 ここは天国か? それとも極楽か?

 温泉ができて最初の頃は、子供たちに風呂の入り方を教えるために一緒に入っていたが、2、3週間も経てば、子供たちもさすがに覚えてくれた。

 が、それでもゆっくりと入れるわけではない。

 というわけで、俺はのんびりと朝風呂を楽しんでいた。

 めっきり寒くなった季節のせいかその温かさが身体に染み入る。


「マキトさん、おっさん臭いですよ」


 くすくすとユキネの笑い声が聞こえた。

 女風呂にユキネとカーラがいるのだ。

 この2人は単純にお風呂が好きなだけである。


「何をおっしゃいますか、ユキネさん。

 これは温泉に入るときの、マナーなのですよ」


「え、そうだったんですか?

 なら、私もぶぇ――」


「やめなさい。バカが移るわよ」


「それにしてもお風呂ってホントにいいですね」


「そうね。マキト、これだけは褒めてあげるわ」


「そいつは、光栄の至りでごぜぇますだ」


「あ、そうだ。ヤマカブラナなんだけど、目が出たわよ」


 ……


「……マキトさん?」


「……マキト? 聞いてる?」


 ……はっ。

 浴場における男女間の壁とその欲情という哲学的な思考に耽溺していた。


「あ、すまん。山ハムスターの屁が出た?

 なんだ? 化け物の話しか?」


「ハムスターじゃなくてカブラナよ。

 それに、屁じゃなくて、芽。バカじゃない?」


「あ、そっちか」


 ヤマカブラナとはカーラが持ってきた冬に育つ野菜の一種だそうだ。

 話を聞く限りカブに近い野菜らしい。

 量を採るというものではないらしいが、現状、食料の貯蓄が少ないのでこれとイモ、そして中麦でしのぐ予定だ。

 いざとなれば、生まれた子牛も潰すか。

 いや、子牛を売って金に換えるという方法も――

 ――俺の鼻が何かを嗅ぎつけた。

 村の者ではない、別の誰かの匂い。


「足音です。子供たちの者じゃない……」


 ユキネもその違和に気が付いたようだ。

 しかし、俺は湯舟の中で大きく伸びをする。

 その匂いを知っているからだ。


「大丈夫だよ、ユキネ。しっかりと温まってから出よう」


 風呂から上がると、そこには悪来族(オーク)のミツミとフウがいた。


「あ、兄ちゃん。ミツミもお風呂に入れていい?」


「いいけど、トーソン(親父)には行ってきてるよな?」


 勝手に来てたらあいつこの村で大暴れしかねん。


「それは、問題ないぜ。

 何せ、パパから行って来いって言われたから」


 フウが呼んだのではなく、トーソンが言い出したことらしい。

 悪来族(オーク)懐柔計画はうまくいっているようだ。


「それでマキトに『手前の目的はなんだ』って聞いて来いって。

 よくわかんないけど、そういえばわかるって言ってたけど……何のことだぜ?」


 うむ、全くをもってばれているようだ。

 しかし、逆にばれているということはいいことでもある。

 アホではないということだ。


「ゆっくりしていってね!

 カーラは知ってるけど、ユキネにはきちんと紹介しろよ」


 俺は質問には答えず、満面の笑みで2人を見送った。

 それから昼過ぎくらいに俺が狩りから帰ってくると、ミツミも混ざって飯を食べていた。

 とは言え、ほとんど食事は終わりかけだ。


「マキトさん、お帰りなさい。

 これがマキトさんの分です」


 そう言ってユキネは料理を並べる。

 そして、その横に自分の分を並べた。


「いつも言ってるけど、先に食べてていいよ?」


「いつも言ってますけど、気にしないでください」


 こうやって屈託のない微笑を浮かべられると、俺には返す言葉がなくなる。

 何とか「ありがと」とだけ言って席に着いた。

 食べ終わると、毛長牛の子牛(クロ)を連れて歩くフウとミツミを見つけた。

 ちなみにクロの毛の色は白い。


「フウから聞いたけど、料理教えたのがマキトってホントか?」


 そばに寄ってきてミツミが聞いた。


「そうだけど?」


「あのリボンつけた小さい子達に聞いたら、

 水車を造らせたのもマキトだって言ってたし、

 畑や温泉もそうだ。

 何のためにやったんだ?」


 エルフのため、そう即答しようとして何故かノドの奥が詰まった。


「マキトはユキ姉を助けたいだけだよ」


 フウがそう言ってうっしっしと笑う。

 うっさい。


「ところで、ミツミはこの村どうだった?」


「面白かったぜ。

 飯はうまいし、風呂は気持ちいいし」


 思った以上に好感触のようだ。


「また、来ていいぞ。今度は姉妹も連れてこい」


「んーイチカ姉は来ないかも

 途中まで一緒だったんだけど、1人で帰っちゃった」


 たぶん、内情を調べるのに子供だけの方がやりやすいと考えたのだろう。

 いい感じである。


「問題ないよ。

 帰ったらすごいよかったって伝えてくれ。

 特にトーソン(パパ)に。

 突然襲われてもたまらん」


「さすがにパパだってそこまでしないぜ。

 また、マキトが襲いかからない限りは」


「襲わないよ!

 つか、襲いかかってきたのはそっちのパパだ」


 そのやりとりを見てフウがケラケラと笑っている。

 いや、お前が最大の被害者だぞ?

 帰るミツミを見送って、俺はまた農作業に戻ろうと納屋へ足を向けた。

 ビバ平穏無事。

 こんな何もない日が続けば――


「兄ちゃん!! なんか風呂場に変な動物がいたよ!!」


 フラグを建ててしまったか……

もし気になったようでしたら是非ごブクマを!

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