42:最悪の穀物
パカパカパッパッパーン
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ニンフ達はたったの2日で水車を作り上げた。
正確には、1日だが、最初に作ったのは『回転する』ということが念頭になかったらしく、もう一度作ってくれたのだ。
「こんなの初めて作ったのデス。マキトは面白いことを思いついたのデス!」
と、なにやら楽しんでくれたようなので良かったが、それにしてもホントに早いな。
しかし、カーラはそれについては、予想通りだったらしい。
むしろ、俺の方のやり方に興味を持ったようだ。
「よくあの模型とやら思いついたわね。かつて、あの大工の腕を何とか使いこなそうって何人もの権力者が雇ったけど、ニンフ達は見たことあるものか、口伝として伝えられてるものしか作れなくて皆諦めたのよ」
「同じ家でも小さく作り変えてたからな。なら、大きくすることも可能だと思っただけだ。運がよかったと言えば、運がよかったよ」
「で、水車作ったってことは、小麦粉作るんでしょ?」
「あぁ、そうだけど……それがどうした?」
「私が何しに来たか忘れたの?」
「子供たちに毒薬の生成方法を教えるためじゃないのか?」
「違うわよ。あれは趣味。私は仕事の話をしてるのよ」
いい趣味してやがる。
……迷惑な。
「私は農業を指導しに来たのよ。ここの気候に合って、栽培が容易な品種をいくつか見繕ってきたわ」
そういって、カーラは自身の部屋に隣接された物置小屋に俺を通した。
そして、木箱から種もみをいくつか取り出して見せる。
「これは、収穫量が多いわ。ただ、栽培が難しいわね。こっちのは病気に強い代わりに収穫までが遅――」
「それでいこう」
「聞いてたかしら? これは出来るまでが遅いのよ」
「こっちはずぶの素人だ。味の良し悪しなんかに文句つけられるか。それとも他にあるのか?」
「それはどうなんだけど……」
俺は、そう言いながら箱の底にある布袋を見つけた。
「これは?」
「それは……言ってみれば最悪の穀物ね」
「最悪?」
そう言って、中から取り出すとその粒はどうにも見覚えがある。
「この辺で育ちそうな穀物を探してて思い出したんで一応持ってきたんだけど、それ食べられたもんじゃないのよ。粉にして焼いてみたんだけど、膨らまない上に冷えたらカッチカチになるの。オーブンもべたべたになって使い物にならなくなるし」
俺はそのもみ殻を潰して出てきた、その透き通った粒を見て思い出した。
「こ、これは!!」
「あら、知ってるの?」
「あぁ、俺の知ってる植物に似てるんだ。これ、ここで育てられるのか?」
カーラは眉間を揉み込む。
「育てられるわよ。これ、水田作る必要ある代わりに連作に強いから。それに、この辺りの植物だから病気や虫にも抵抗あると思うし。でも、わかってる? これ、まずいのよ。食えたもんじゃなかったわ」
思い出したかのように、舌を出してまずさを強調している。
「食べ方間違ってるんだよ。これは、来年には実らせられるか?」
「う、正直、これを育てると思ってなかったから……量が足りないわ……恐らく、この森のどこかには自生してると思うから、そこから収穫してくるしかないわね……」
「予想はつくか?」
「まぁ、最低限度わかることと言えば、水辺ってところかしら」
「いいアドバイスだ」
「うるさいわね、仕方ないでしょ。これ……よりによってこれ……」
カーラが頭を抱えるが、要は、米を大量に収穫してくれば良いだけだ。
◆◆◆
「というわけで、こんな物を探しています!! 見たことある人!!」
晩飯に集まったエルフの子供たちに俺は子供たちに聞いてみた。
すると、ちらほらと手が上がるではないか。
さすが、エルフ。森の子供達である。
「なんか、まずそうな実だなって思ってよく覚えてるよ」
「あ、私も見た。まずそうだよね」
繰り返す。さすがエルフである。
「で、どこで見たか覚えてるか?」
「確か、フウがイノシシ追いかけてたよね。だから、あの洞窟のそばじゃないかな」
「あ! あそこか! 僕、覚えてるよ」
「明日にでも連れて行ってもらっていいか?」
「いいけど……やめた方がいいと思うなぁ……」
「なんで?」
「だってあれ、オークの巣だもん」
……なんともめんどくさいことになりそうだ。




