39:マイスウィートハウス
「おぉ! 家だ~~!!」
フウが両手を上げて叫ぶ。
そこにあったのは、立派な平屋の一軒家であった。
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【実績が解除されました】
●第一村人 ――村は作るんじゃなくてできるもの
⇒家を建てた
【実績解除ボーナス】
熟睡:睡眠による回復量がアップ
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元々あった廃墟の中で、基礎などがしっかりしているものをレットが選び建て直したものである。
思ったよりもしっかりしていて、性別や年齢によって分けられるようにと4部屋くらいに分かれていた。
その横には、カーラの実験室を兼ねた小屋もできている。
レットは「俺は基本的には設計の方が得意なんだけどな」と言っていたが、それでもこれだけのものを一週間そこらで作り上げるのは、なかなかの腕前なのだろう。
ちなみに俺も手伝ったので【建築C】のスキルが身についた。
「これで、私も普通に着替えができます。フウもそろそろその辺は気を付けさせないといけないし」
ユキネが着替える時は、男は、というか主に俺が部屋から追い出されるのだ。
うん、その辺で気にもされず着替えられるのは悲しいからいいんだけど。
「そうですねー」
「なんで残念そうなんですか?」
例え追い出されるとしても、着替えてるってわかったらドキドキするじゃん。
などとは、口が裂けても言えない。
「それに、ベッドまで作ってくれたんですね」
こっちは、完全に俺が作ったものだ。
ダブルベッドよりもうちょっと広いので小さい子供なら4,5人一気に寝られるはずである。
ちなみに、敷き詰めている綿らしき物体は羊毛や羽毛などではない。
俺が夜な夜な夜なべして作った、いわば俺毛で作った綿だ。
なんか気持ち悪いから言わないけど。
「……台所がある」
「マキトに頼まれたからな。これから冬になっていくのに外で作るの寒いだろうって」
サンは今では完全にこの村のコック長である。
嬉しそうにしているサンに、俺はさらにプレゼントを渡した。
「ローニさんから預かってたんだが、ナイフだ。台所が完成したら渡してくれって」
サンは嬉しそうにその片刃のナイフを見つめる。
たぶん、恐ろしいほどの切れ味なんだろうな。
まな板一枚で足りるだろうか。
「今日は、最低限の家事だけして休みにしよう。畑と、洗濯だけだ。後は全員で引っ越し作業だ! ここを定住の地とする!!」
「わーい!!」
「そして、祭りをするぞ!!」
「わーい!!」
「歌を歌うぞ!!」
「それは兄ちゃんだけでやって」
◆◆◆
翌朝、俺は馬に鞍をつけるレットと話していた。
「家造りは任せとけ、そう言ったよな。お前」
「言ったぞ。作ったじゃないか。水車とお前達の部屋はまだだけどな」
レットは俺の視線を払うように手を動かした。
「なら、そんな大事なお仕事を捨てて、商国に戻るってのはどういうこった」
「仕方ないだろ。俺は、元々ここには情報収集できたんだ。たまには飼い主のご機嫌もうかがわなけりゃならん」
畜生、マイスウィートハウスはお預けかよ!!
「ちゃんと戻ってくるから安心しろ。いい情報も持ち帰ってやるさ。なんか調べてほしいことはあるか?」
情報か。いろいろと知りたいことはある。
が、レットにどこまで出来るのだろうか。
「商国における帝国の影響力と、帝国が俺のことを知っているのか。いや、間違いなく知っているんだが、どの程度脅威に思ってるか」
「やっぱり気になるか」
「まぁな……」
しかし、帝国のことなどわかるのか?
俺の疑問に気が付いたのか、レットは不敵に笑った。
「任せろ。俺はそっちが本業だからな」
そう言って、行ってしまった。
戻ってくるのを信じるしかないか。
さてと、今日は畑を……
「兄ちゃん!!」
狩りに出ていたはずのフウだった。
「どうした? ユキネは?」
「変な奴らが森の中を通ってるんだけど、様子が変なんだよ。ユキねぇが僕に兄ちゃん呼んで来いって」
変な奴ら…… 背筋をピリッとしたものが通り抜ける。
また、奴隷狩りか?
「ライウとサンに子供集めさせろ。フウはカーラを探してこい。見つけたらまた、集会場に立てこもれ」
フウがうなずくのを確認すると、俺は即座にフウとユキネの残り香を追跡していく。
その先ではユキネが緊張した顔で立っていた。
「あれなんですけど……」
そこにいたのは、1台の荷馬車だ。
その周りを荒事専門家と言わんばかりの連中が囲っている。
人数は6人ほどでドワーフやエルフ、そしてヒトの混合のようだ。
「そろそろ出るか? それにしても何で急にあんなに騒ぎ出したんだ?」
「ニンフどもの悪癖だ」
顔に傷を負ったエルフが顔を険しくしながら荷車を叩いた。
中から、悲鳴が上がる。
「おいおい、あんまり騒ぐな。この辺、人食い鬼が出るって話だぜ? 何でも同業者の連中が一晩で消えたとか」
「アホか? そんなもん、トロルやキマイラに比べたら大したことねぇよ」
「そうかもしれねぇけどよぉ」
筋骨隆々の男がキョロキョロと辺りを見渡す。
あの体格からいって恐らくドワーフだ。
俺がユキネに視線を送ると、険しい表情で男たちを見ていた。
そして、あきらめたように首を振る。
「私達には……私達には関係ありません。このまま――マキトさん……何を?」
俺は右手を振り上げるとそのままユキネの頭頂部にチョップを叩き付けた。




