33:「なにはなくとも、あなたはいきなさい」
マキト達が街に行ってる間の話
本日は短いの3つほどあげます
「いってらっしゃい!!」
「気を付けてね!!」
「おいしいの持って帰ってきてよ~。僕、お肉がいい」
「私は魚!!」
サンを連れて商国へ出立するマキトとユキネに、子供たちは好き勝手な注文を口にしている。
フウはそれをあいまいな表情で眺めていた。
「フウ、みんなのことよろしくね。ローニさんの言うことちゃんと聞くのよ」
「うん、ユキねぇも気を付けてね」
長年森に住んできたエルフにとって、死とは隣人である。
だからこそ、例え皆殺しにあったとしてもエルフの子供たちはひどく悲しまなかった。
父や母は、祖父母は、家族は森に還っただけだから。
しかし、その隣人が好きなわけではない。
別れはつらい。
フウにとって、ユキネもマキトも信頼でき、導いてくれる家族なのだ。
その人たちがいなくなる。
行き場のない恐怖に似た感情が、フウの中でぐるぐると回っていた。
しかし、それを見せてはいけない。
2人は、自分を信頼してくれたのだ。
たとえ導くことはできなくても、2人が戻ってくるまでここを守る。
それこそが唯一、できることだ。
フウは、出来るだけ大きな笑顔を作ろうと顔を歪めた。
それを見てユキネは目を細める。
そして、フウをやさしく抱きしめ、おでこをくっつけた。
「なにはなくとも、あなたはいきなさい」
それはエルフの教えである。
エルフの子供たちは最初これを言葉通りに受け取る。
――友が、家族が、愛する者が目の前で殺されようとも、それから目を背け逃げろ。
自然は残酷なのだ。
そして、フウは新たな意味を知った。
なぜユキネは、1人で逃げなかったのか。
自分の命を顧みずに、エルフの子供たちを連れて逃げ出したのか。
――命を繋ぎなさい。
世界が残酷なのだ。
フウもユキネを力いっぱい抱きしめた。
ポカポカとして心地よい。
フウは、今度こそ笑えた。
「いってらっしゃい」




