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26:一緒にエルフの村を守るよ

 正門で女王よりお言葉を承ってから1時間ほど経った時。

 兵士たちの士気は非常に高かった。


「あ~エミと一発やっとけばよかった!!」

「うっせぇなぁ、どうせ股間蹴られて終わりだろ」

「俺なんて今度結婚すんだぜ? なんでこんな厄介なことに」

「おいおい、そりゃフラグだな。安心しろ、お前の嫁さんは俺が幸せにしてやるからよ」


 誰も彼もがゲラゲラと笑い合っている。

 しかし、きっとそれは恐怖の裏返しなのだろう。


 それから30分経った。

 俺は、門から斜めに森へ受け流すように敷かれた斜陣の最後の場所で受け構えていた。


「通常この陣形は、相手に即応するために用いるのですが。それを、このように使うとは。流石は我が団長といったところですね」


 ローランドの言葉にガザンは、うむ、とうなずいた。

 と、一人の兵士がこちらに走ってくる。


「ガザン副団長!! あのエルフが!!」


「あん?」


 ガザンが眉根にしわを寄せる。

 俺もその兵士が指を差す方向を見て驚いた。


「ユキネ!!」


「マキトさん!!!」


 なんと、ユキネが現れたのだ。


「どうしたんですか! 待っててって言ったのに!」


「待ってられませんよ! マキトさんがここにいるのは私たちのためなのに! なんで毎回、一人で無理するんですか!!!」


 ユキネの目には涙が溜まっていた。


「マキトさん言ってくれたじゃないですか! 一緒に守ろうって!!」


 うぐっと俺は言葉を失う。

 確かにそういった。


「私もみんなを守らせてください」


 ユキネが俺の手を握る。

 ガザンはそれを見てにやにやと笑った。


「女泣かせちゃダメだってママに習ってないのか?」


「それとこれとは……」


「戻る時間もありませんよ、安心してください。いざとなれば、2人分の墓を作ってあげますから。それに、弓兵はいてくれた方がいい」


 ローランドが前方の森をにらみつける。

 と、森の奥より土煙が上がりだした。

 それに先駆けるように、空を飛ぶ魔物がこちらに向かってくる。


◆◆◆


 戦争は数で決まるらしい。

 魔物の群れは最終的な予想では300を超えていた。

 それに相対した軍勢はたったの60。

 激突から数十分後にはすべてが決していた。


「終わった!! 勝ったぞーー!!」


 兵士たちが快哉を上げる。

 レヴァインも身体中に傷を負っているが、命に別状はないようだ。

 支えていた兵士を散らすと、てきぱきと戦後処理を始める。


「生きてますか……」


 ローランドの言葉にガザンが歯を食いしばり右手を掲げてそれに答えた。


「生きて……ます……」


 逆にユキネはその場に倒れ込んだ。

 空を見上げて横たわるが、その胸はいまだ酸素を求めて激しく上下している。


 そこは、死屍累々としていた。

 何せ、魔物たちの最終到達地点にして、屠殺場であり最激戦地区である。

 ここに迷い込み殺された魔物と、暴れる魔物に殺された兵士。

 それらが等しく命を失っていた。


「それにしても、あなた……本当にヒトですか?」


 ローランドは剣を杖代わりに近くの石の上に腰かけると俺を驚愕の浮かんだ瞳で見ていた。


「マキトさんは、強いんです」


 俺はそう言われて自分の身体を確認する。

 受けた傷はほとんどないし、受けたところもこの戦闘中に会得した【治癒】によってもう治り始めている。

 疲労感もほとんどなく、息が上がるような状態にはなっていない。


「やはり騎士に……」


 ローランドの言葉を俺は遮る。


「悪いけど、俺はユキネさんと一緒にエルフの村を守るよ」


「そうですか……」


 ユキネさんの耳がぴくぴくと動いた。

 あの動きは、たぶん喜んでいるのだろう。

 それを聞いていたガザンは大きく笑った。


「マキトはそれでいい。それがいい。いつか、俺と手合わせしてくれよ」


「村に来てくれたらいくらでもしてやるよ。それにしても……」


「それにしても?」


「こいつらの動き、気にならないか?」


「どういうことですか?」


 俺の言葉にローランドが首をかしげる。

 一方ユキネは、俺の疑問に口を開いた。


「何かから逃げてるようでした」


「そうだ。こいつら目的があるってより逃げてるような感じだった」


「言われてみりゃそうだな」


 ガザンが、頷いたのと同時に地面が大きく揺れた。

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