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25:寝不足

 俺は、ガザン達、鉄鷲騎士団の精鋭ととも城門前に集められていた。

 ユキネも行くと言っていたのだが、なんとか説き伏せてサンと共に安全な場所へ避難させてもらっている。

 無関係な俺が行くのだから、それくらいはしてもらわなければ困る。

 そんなわけで不機嫌である、といった具合に顔にしわを寄せているのだが、ガザンには無関係らしい。


「鉄狼と鉄鷲は騎士団の中でも戦闘力が飛びぬけた部隊なんだ。まぁ鷲の方が強いんだけどな」


「何を言いますか。ふらふらあちらこちらに飛び回る鷲よりも狼の方が強いんですよ」


 どうやら、俺の心中など気にしていないらしい。

 俺はあきらめて話に乗っかる。


「鷲と狼が特に強いっていうことは、団によって特徴があるのか?」


「そういうことです。鷲と狼はそれぞれが重装歩兵と軽装歩兵を従えた50人の団で主に戦闘を担います。狐は数は20と少なく、主に女王の警護が主任務となります。亀は魔術師を揃えた30人の軍団ですね。蛇は主に警邏を行う100の軍団です」


 俺が眺める。恐らくここにはそのほぼすべてが集まっているのだろう。

 となると、250人くらいしかいないのか。

 大丈夫か?


 俺の不安をよそに、女王が集められた兵士の前にずいと立った。

 女王はその鋭い視線をすべての兵士に送り、そしてそのすべての兵士から視線を受け取ると、口を開いた。


「諸君たち、よく集まってくれた。私が敬愛する最強たる騎士団へ、我が国の最弱より願いがある。この国は危機に瀕しているらしい。私はそれが恐ろしくてかなわない。恐ろしくて日課の昼寝も切り上げるほどだ」


 ユフィンはわざとらしくあくびのマネをする。

 兵士たちはそれを見てクスクスと笑った。


「諸君たちは、よく訓練され優秀で勇者であると信じている。私の悪夢がいち早く覚めることを願う」


 ユフィンが下がると、今度はレヴァインが立った。


「さて、ユフィン陛下のお悩みとは、魔素によって命のようなものをふきこまれた生命と呼ぶこともおこがましい魔物どもが、この愛すべき人々の住まう愛すべき寝所を襲おうとしていることだ。我らが愛すべき女王陛下、並びに住民達は、そのような羽虫共のせいで寝不足だ。全く迷惑な話である」


 そう言ってから、ドン、とレヴァインは足を踏み鳴らし姿勢を正した。

 兵士たちもそれに倣う。


「君達はこれから騎士ではなくなる。たった一振りの剣だ。一本の槍だ。魔法の一撃だ。君達は今から血の一滴まで燃やし尽くしてもらう。なぜなら君たちは我が国の防壁であるからだ。我らが領民の安眠のために君たちに、命令を下す。戦え! 殺せ!」


 兵士たちは自らの意思を鼓舞するかのように拳を振り上げてウォーと叫んだ。


「恐ろしいこと言ってんな」


「まぁ、死ぬかもしれませんからね。無理やりにでもテンション上げないとやってられませんよ」


「あんたはテンション上げなくていいのか?」


「私は死にませんもの」


 ローランドはそういって口角を上げた。

 自信ありということだろうか。

 俺は隣でにやにやと笑うだけのガザンにも視線を送る。


「俺か? 俺はそんなことしなくても即座にテンション上がるから問題ねぇよ。それに俺、強いし」


 何とも性格の悪い2人である。

 そして、俺は言われるがままに戦闘に入ることになるのだった。

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