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成長

本日投稿したのはプロローグです。

今更と思うかもしれませんが載せさせていただきました。

混乱された方すみませんでした。


 その絵本を読み終わったレイはふう、と溜め息を一つ付き、自分の膝に座り絵本を見ていたソウマに顔を向ける。


「これでいいか? ソウマ君」


「うん! ありがとう!」


 ソウマは満面の笑みでレイにそう言うと、レイも満足そうにうむ、と一つ頷く。


「ねーねー」


「ん、 なんだ?」


「この絵本に書いてあることって本当にあったの?」


 ソウマは首を傾げながら、レイにそう疑問をぶつけた。

 レイはそれを聞き天井の方に顔を向けながらどう答えようか、と少し考える。


「うむ、それは歴史家や研究者の奴らも年々議論し合っていることでな。

 実際の出来事だと主張する賛成派と空想の出来事だと主張する反対派がいるんだが大体数も半々で毎回いろんな議論を交わしていると聞くぞ」


「へ〜、そうなんだ〜」


 レイの言っていることは事実である。

 何故引きこもりのレイがそんなことを知っているのかというと、レイは数ヶ月に一度幾つかの街に訪れ世間の情報を仕入れているのである。

 そのおかげで世間の情報には明るいとは言えないがそれなりに持っている。

 数年前から以前はシャルから情報をもらっていたりしていたのだが最近はそれもなくなり自分で街へ赴き情報を仕入れるという手を取っている。


 そしてこの絵本については昔から議論されている。

 だが決定的な資料が無かったり、そもそもこの絵本が作られた年代が特定できず、それといった有力な説もない。


「まあ、これと似たような出来事があってそれを元に作られたというのが主流らしいがな」


「へ〜」


 そして毎回議論は結局そこへ落ち着く。

 全てが事実ではないだろうが似たような出来事が過去にあったのだろう、と言う結論に。そしてまたしばらく経つと性懲りも無くまた激しい討論という名の相手の派閥への罵り合いが始まる。

 そのようなことを昔から繰り返されていた。


「あとね〜、この『黒い奴ら』って何かわかる?」


「ああ、それはほとんどの学者たちが魔物だろうという意見で一致している」


「ふ〜ん」


 レイはソウマを脇から抱え上げ床に下ろす。


「ねぇねぇレイ〜」


「ん、どうした?」


「文字をおしえて」


 絵本を読むうちに自分で読んでみたいと思ったのか藪から棒にレイにそう頼み込む。


 レイはソウマに頼まれてどうしようかと考える。

 ソウマの年からして今はまだ早いと思わないでもないが、何かに意欲的に取り込むことはいいことだ。

 それに早くて何が悪いわけでもないし、とレイは考えソウマに肯定の意を示す。


「よし、わかったぞ。

 だが今からやるのはなんだし、文字を教えるのは明日からでいいか?」


 今はもう既に夕方。

 外の陽は傾きあと少しで完全に暗くなり月が顔を出すだろう。

 流石に今から教え始めるのは遅すぎるとレイは思ったため明日にしようと言った。


「うん、もちろん!」


「うむ、じゃあ今から夕食の用意をするから適当にしばらく過ごしといてくれ」


「わかったー」


 そう言いソウマはとてとて、とその部屋を出て何処かへ走っていった。

 元気だな〜、と微笑ましく見守りながら怪我をしないよう呼びかけてから夕飯を作るためリビングに隣接しているキッチンへと向かった。




 ☆★☆




 既にソウマがベッドでスヤスヤ眠った頃、レイは今、明日ソウマに文字を教えるために使う教材になりそうな物を書庫で探している。


「ふむ、どれにするか、難しすぎるのはボツだな」


 数多ある本を前にし、その中からどれを明日ソウマに教えるのに使おうかレイは迷っている。

 レイはソウマの絵本を買ってあげたときに一緒に文字を教えるための教材も買ってある。ちなみにその教材は絵本数冊分ほどの値段が掛かった。

 レイは最初から特に難しくする必要もないか、と思い幾つかある絵本の中からさっと三冊ほどの絵本を抜き出し明日文字を教えるための教科書代わりの物として使うことにする。


「よし、これでいいか」


 レイはそう呟き計四冊の本を手に取る。レイはこれでよし、と一つ頷いた後その四冊の本を持って書庫を後にした。


 書庫を出て、本を居間に置いたレイは寝室へと向かう廊下を歩いている。レイはその時、ふと月明かりが差し込む開けっ放しの窓が目に入る。

 レイは閉めるのを忘れたか、と思いながらその窓に近づき閉めようとする。そのときレイは何気なく閉める前に窓の外を眺める。

 その窓の外には外壁が見え、その上から光る二つの月が顔を見せている。

 レイは閉めるために掴んでいた窓から手を離し体を窓から乗り上げるようにして月を見上げた。

 今日は年に数回の二つの月が満月になる日だったらしく、レイはじっと呼吸する音さえも無くしその月を見上げる。

 昔から何一つ変わらないその美しく輝く月は変わりなくレイを、ヒトビトを照らしている。

 レイはその月を暫く眺めた後、窓を閉め何事もなかったかの様に再び寝室へと向かっていった。




 ☆★☆




 レイがソウマに絵本を読んであげた次の日、朝食を食べて一服を入れた後にレイはソウマに昨日選んだ教材を使って文字を教えていた。

 ソウマはレイの想像以上に賢く文字だけならば今日のうちだけで全て覚え切れそうな勢いだった。


「すごいな、ソウマ君。

 もう文字に関しては完璧だな!」


「えへへ〜、まあね!」


 レイはソウマの飲み込みの早さに驚く。

 まだ齢二歳と少しでありながら既に文字を全て、それも一日で覚えてしまっている。

 この子は天才じゃなかろうか、とソウマに文字を教えながらレイはそう考えていた。

 レイはソウマの頭を撫でながら明日からはどうしようか、と考える。

 もともと何ヶ月かの時間をかけるつもりで文字を教える予定であったのだ。

 流石のレイも一日で全ての文字を覚えきられるのは予想外だった。

 困ったものだ、と表情を努めて平成に保ちながら明日からの変更せざるを得なくなった予定を組み直す。

 とりあえず明日からは数週間は絵本を使って読むことに慣れさせてから、少し難しめの文法を世間の一般常識と並行して教えて行くか、とレイはそう考える。


 いやはや困ったものだ、と今日のソウマ君への授業を終わらせ、夕食を作るとソウマに告げてキッチンに向かいながらそう苦笑する。

 そして、その飲み込みの早さにレイが頭を悩ましているとは全く気付かないソウマは、今日の夕食は何かな、とニコニコ楽しみにしながら最近お気に入りの絵本を開いていた。




 ☆★☆




 レイがいつも不思議に思っていること。それは、何故かレイと一緒に入浴することをとても恥ずかしがることだ。

 ソウマは順調に育っておりもうすぐで四歳になる。

 文字も完璧にマスターし、拙いながらも自分で文字も書けるようになってきた。

 レイはソウマが文字を覚えた記念に豪勢な夕食を作りちょっとしたパーティをした。

 レイはことある毎にこのようなものを開いてる気がするが二人とも嬉しそうなので特に問題はない。

 今でもたまにレイに本を読んでほしいと頼み込んでくることもあるが、今では自分一人でしっかりと読めるようになった。


 そんな順調に育っているソウマだが何故かレイと一緒に風呂に入ろうとすると顔を赤くしてジタバタと腕から逃げ出そうとする。

 レイは首を傾げ疑問に思いながらも腕から落ちないように抱きかかえ直すと全身を真っ赤にしてぐったりとする。

 それを何回も繰り返しているのだがその反応が面白くてレイはやめようとしない。

 ソウマは言葉にしてやめてと言うが成長したとはいえまだまだ小さい子供を一人で風呂に入れさせるのは心配なのでソウマの言うことをレイが聞くことはなかった。流石のソウマもそこで抵抗を諦め何処か悟ったような顔で風呂に入るようになった。

 ソウマがレイと一緒に風呂に入っても何も反応しなくなったことに、入れるのが楽になったと同時に少し落胆をした。そして、その悟った顔を見てレイは何がこの歳の幼子にこのような顔をしているのか首をひねるのであった。


 そして、その疑問はソウマが五歳の時に明らかになった。




 ☆★☆




「おやすみ、ソウマ君」


 レイはベッドへと入ったソウマが寝静まったのを見た後ソウマの部屋のドアを閉めキッチンへと向かう。


 キッチンでお湯を沸かし紅茶を作る。


 そしてその紅茶を携え自分の寝室へ向かい、紅茶を飲みながら読んでいる途中であった本を開く。

 レイが今読んでいる本は様々な料理のレシピが載っている本であり、その作者は若き時さる王国の宮廷料理人であったという人物だ。

 本自体はレイが昔に本を買い占めた時の、本の中にあったものだが今まであまり料理に興味を示さなかったレイはその本を本腰で読んだことは一度もない。

 だが今や腹を痛めて産んだ子ではないが家には食べ盛りの子供が一人、味にも気を使いたかったレイは最近この手の料理本を暗記できるまで読み込んでいる。

 こうして読んでみると案外面白く、レイは繰り返し繰り返しじっくりと読み込んでいる。

 静寂が広がる部屋に本のページがめくれる音と紅茶を飲む音だけが響く。

 その本を二十ページ程読み進めたところで、レイはほんの僅かに眉をしかめながら本から目を外し顔を上げる。


「……ソウマ君?」


 この家にレイ以外の反応が一つ、それがなぜか動いている。つまりはソウマ君が寝ておらず起きているということだ。


 最初は寝れず少し動いているだけかとレイは思っていたがそうでは無いらしく、何処か挙動不審な動きをしながら部屋を抜け何処かへ向かっている。

 レイは読んでいる途中のページにしおりを挟みカップとともに机に置く。

 レイはソウマの後を何処へ向かっているのかを確かめるべく、部屋を出てその真っ暗闇の廊下を進んで行った。



 ソウマは階段を登り書庫に入っていったようだ。

 レイはソウマが何をしているのかそっとドアを音を立てないように開き中を覗き込む。

 そこではソウマが、分厚くまだ小さいソウマの身長の半分ほどの大きさのでかい本を抱え床に置き本を開いてるところだった。

 レイはソウマがいる位置とその本の特徴的なその大きさを見て魔法関連の本であることに気づく。

 レイは魔法に興味があるなら聞いてくれればいいのに、と思いながら開きかけのドアに手をかけ中に入ろうとする。

 しかし、レイはそこでソウマの中の魔力の動きに変化が生じたことに気づく。

 レイは開けようとしていたその手を止め再び覗くようにしてソウマを見つめる。

 ソウマはぶつぶつと本を小さな声で音読しながら人差し指を立て指先に魔力を集める。

 そして、




ーーーその指先からボウッとまるい魔力光が浮かび上がった。




 レイは驚きから目をみはる。


 今ソウマが出したのは無属性の初級魔法ライトだ。込める魔力によって大きさや明るさが変わる、その安全さや発動する容易さから大体のヒトが最初に覚えて使う魔法だ。


「やった! できた!」


 レイの耳にソウマの喜びの声が届く。

 ソウマはレイの存在に少しも気づくことなく、ぼんやりとした小さい魔力光を出したり消したりしながら大喜びしている。

 そしてソウマの口からレイが今まで心の中にあったわずかな疑問、それが明らかになる一言が飛び出す。


「やっぱりここって異世界・・・なんだ」


 レイはその言葉を聞いたところでドアを閉めて、そのドアにもたれかかった。


 そしてポツリと口からレイが今頭に思い浮かび、気づいたことを口に出す。

『異世界』この世界をそのような表現をする人種は限られてくる。



「転生者、か」




誤字脱字、文書の違和感などの指摘大歓迎です。

次回の投稿の予定は未定です。

近いうちにあげたいと思います。

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