3人目、4人目
二話
「ふむ.....遅いな、シグレ」
「俺に言わないでくれるー?」
頬杖をつくマソラに机をトントンと指先で叩きながら答えるシグレ。
その瞬間。
「ヤッハァァァァ!」
何者かが壁を破壊し室内に飛び込んでくる。
「ぁぁぁぁぁ、すまない、すまない」
巻き上がった粉塵をブンブンと手で払い、謝りながら大柄だが人の良さそうな男が入ってくる。
「おぉ、あなたたちは!」
「ここに呼ばれた者だ。詳細はもう教えてもらっている。俺の名はユウヒ。この壁を壊したのは友人のイツキだ」
一気に紹介を終えた男、ユウヒにこちらの紹介を終え、ついでにイツキの謝罪を受けた。そしてこれまたついでに何故かマソラとイツキの腕試しが始まった。
お互いに激しくぶつかり合い、マソラの特殊な大剣とイツキの氷を纏う二刀流の斬撃が繰り出される。
そして、その頭をどつく二人。
「あのねマソラさん?壊れるから研究所が」
「壁を壊しただけでは飽き足らないのかイツキ?」
オカン二人の説教が効いたのか、即座に二人は武器をしまう。
「「誰がオカンだ!」」
すみません。
「ところで。あとの3人だが先ほど会ったぞ」
ユウヒの言葉に若干しょんぼりしていマソラが勢いよく顔を上げる。
「あー、会ったな。あの3人だろ?」
ユウヒの言葉に相槌を打つイツキ。
「ふーん、どんな奴らだった?」
「一人は....なんつーか、番長...みたいな」
「なにそれ怖い」
「もう一人は冷徹そうな感じだったな。だが賢そうだった」
イツキの言葉をユウヒが引き継ぐ。
「あともう一人は女性だった」
「女性一人とは....少し肩身が狭そうな」
マソラがつぶやく。
「そのせいかもしれねぇが歌姫のところに行ってたぜ」
「歌姫....ですか」
「歌姫を知らないのか?」
マソラの少し困惑したような表情にイツキが眉をあげる。
「恥ずかしながら」
「歌姫ってのはその名の通り歌を歌ったり踊りをやったりするやつでな。この国には五人の姉妹がいて、長女の姿は誰も見たことがないそうだ」
「それと関係あんの?」
「歌姫の歌は魔族を封印できるんだ。だから王政に関係のある者達にはもう一つの勢力として数えられている。人間勢力、魔族勢力、歌姫勢力、とな」
ほぉ、とマソラが感嘆の声を漏らす。
「それ程頼りになるのですか!」
「そりゃ頼りになるだろ。本人達は歌を歌うだけの童話に出てくるか弱い乙女とは違って血に塗れて戦場に君臨するからな」
「戦乙女ヴァルキュリアのようだからヴァルキュリアと称す者もいるくらいだ」
「それはそれは...味方になってくれるといいですな!」