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主食はビーフウエリントン

トンデモ五大小説・外国文学編

アクセスいただき、ありがとうございました。よろしければ、他の作品もお読みたただけると幸いです。


①「Kの冒涜」(SF)

 独立国家を名乗る軍事武装テロ集団「真日本帝国」が北海道を占拠。沖縄は独立して琉球共和国、朝鮮半島は南北統一して朝鮮民国に。極東アジアの国境が塗り替わる国家論サイバーパンクSFアクション。


②「スポーツ不要論」(エッセー)

 物議を醸しだした賛否両論、人気エッセー。行政やマスコミとスポーツの関係をメッタ斬り。エッセー集「主食はビーフウエリントン」シリーズ。


③「千鳥鉄の女」(歴史)

 謎の忍者集団、能面党と柳生一族の戦い。江戸幕府存続に関わる機密とは?秘武器、千鳥鉄を操る忍者の正体は?痛快、時代アクション小説。

 さて、日本トンデモ五大小説を書いたついでに、外国文学編もやりたくなった。

 トンデモ小説として選出した条件は以下の通り。


①トンデモ指数  読んだとき「何だこれは!」と私を驚かせた指数

②面白指数    ①を満たしていても、面白くなかった小説は選外!

③マイナー指数  世間一般に読まれてない(と推定される)方が点数は高い



1.「猶予(自由への道・第二部)」 ジャンポール・サルトル ①★★★★ ②★★★★ ③★★★★★


 第二次大戦直前のフランス。膨大な登場人物による、膨大なストーリーが縦横無尽に交錯する。

 通常は映画やテレビドラマのように、一場面はある程度の長さを持ち、個々のストーリーは意味を持つが、ときどき場面の切り替えが極端に早くなる。

 例えば、「東京でA氏が「あっ」と叫ぶ、と同時に大阪でB君は欠伸をし、名古屋でCさんはゲームをしている。」といったように、一文の中で複数の場面が切り替わるのだ。

 歴史とは、同時代に生きる個々人の意識の総体であり、一個人がすべてを俯瞰しているわけではない、とするサルトルの思想を体現した小説である(というようなことが、あとがきの解説に書いてありました)。 



2.「百年の孤独」 ガルシア・マルケス ①★★★★ ②★★★ ③★

 

 ストーリー圧縮小説。本来、10ページ程度で描写するストーリーを一行の文にまとめる、といったように、膨大なストーリーをできるだけ小さく圧縮している長編小説。

 南米の一族の歴史を延々と描いた内容で、本来の濃度に薄めれば、「グインサーガ」全巻以上の分量になっている小説なのだ。

 とはいえ、圧縮しなければ味がでない”漬物小説”でもあるかもしれない。



3.「ヴァリス」 フィリップ・K・ディック ①★★★ ②★★★★ ③★★★


 自身が精神病を患うディック晩年の大作。ストーリーはディックの私小説のようなもので、特に超常現象が起きていないようなのだが、精神分裂症の主人公はCMを見ても神からのメッセージだと妄想してしまう。

 主人公に降りかかる出来事が、すべて狂人の幻覚なのか、本当の超常現象なのかわからないもどかしさが、読者に緊迫感を与える。

 それ以上に、人生に懊悩する主人公の姿に文学性がある。

 太宰治「人間失格」の新感覚スタイリッシュSFホラーバージョンといったところか。

 われわれが認識する現象は脳に与えられた刺激にすぎず、すべては幻覚であるとする、主人公の独自の宇宙観は、読者に知的興奮を引き起こす。


4.「裸のランチ」 ウイリアム・バロウズ ①★★★★★ ②★ ③★★


 まともなストーリーは第一章だけ。ニューヨークで麻薬常習犯の主人公が警官に追いかけられ、地下鉄に乗ってうまく逃げる。

 第二章以降は麻薬中毒患者の妄想(と文芸評論家たちは解説)。

 第二章以降はこんな感じだ。

 小説Aの第一文の次が小説Bの第一文、その次がAの第二文、次がBの第二文、次がAの第三文、次がBの第三文・・・・といったように(実際は三種類以上の小説)、複数の異なる短編小説の文章を混ぜ、ときどきそれらが合成される。だから行を飛ばして読むとストーリーが出来上がる。

 滅茶苦茶にも思えるが、最後は詩のようにまとまって美しく終わる。

 トンデモ度は世界文学文学随一。ただこれが面白いかというと微妙。ぎりぎりの線で面白いと判定した。



5.「薔薇の名前」 ウンベルト・エーコ ①★ ②★★★★★ ③★★


中世の修道院を舞台にした歴史ミステリー。ヨハネの黙示録の記述を「見立て」に、修道院で連続殺人事件が起こる。

 この小説の最大の魅力は衒学的な知的興奮にある。

 そもそもミステリー作家はエドガー・アラン・ポーが元祖である。フェアプレイ偏重のエラリー・クイーンでも、「シャーロック・ホームズ」シリーズのコナン・ドイルでもない。

 ポーの「オーギュスト・デュパン」シリーズは、謎解き以上に全体に漂う知的雰囲気が魅力であり、謎解きの方がむしろ”おまけ”かもしれない。

 「薔薇の名前」は、その意味でポーの目指した元祖ミステリーを受け継ぐ、本格派以上の本格派ミステリーと言える。

 ただこれがトンデモ小説かと言われると微妙だが、面白さは最高なので五大小説の最後に選出した。


 

****

番外編


 実はこの小説は全部読んでいない。七巻中二巻まで読んで挫折。

 完読せずに評論する資格はあるのか、と言われてしまえば反論の余地はさらさらないが、どうしても気になる小説なので、一言出しゃばらせていただく。


「失われた時を求めて」 マルセル・プルースト ①★★ ②★★★★★ ③★


 この作品の特徴はわかりやすく言えば、小説+評論+散文詩だと自分では思っている。

 主人公の生い立ちを描いた一人称小説だが、描写の仕方が小説と言うより評論である。

 特に心理描写が緻密で、小説より評論や論文の域に達している。

 論文だから一文一文が長く、論理的なのだが、よく読むと非常に詩的で美しい文なのだ。

 つまり論文の散文詩である。

 散文詩だからこそ、文学としての魅力がある。


”全体小説”ってサルトルが提唱して、「自由への道」で実践した小説方法論だったのですね。今日、ネットで知りました。

ところで”全体小説”って何?

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