第八十二話 アズールとセールとシンザ
「げ・・・兄さん」
セールの呟きを聞き流したアズールが、シンザに微笑んだ
「久し振りだね、シンザ」
「アズールさん、ご無沙汰していてすみません」
シンザが申し訳なさそうに答えると、アズールが苦笑した
「いや、君たちが頑張っているのは良く知っているから気にしなくていいよ」
「ええ、お客さんが増えて来て、忙しいですけど嬉しいです」
アズールが嬉しそうに微笑むシンザの頭をぽんと軽く叩いてから、セールに向き直った
「久し振りだね、セール?」
穏やかに微笑んでいるアズールに、セールが口元をひきつらせた
セールの顔を見たニヴィとジヴィが、そっとクラースとローザを居間に促した
「・・・ご無沙汰していてすみません、兄さん」
渋々丁寧な挨拶を返したセールに、アズールがにやりと笑った
「いや、仕事が立て込んで来てもあの店に自分以外の男を入れないようにする努力を怠らないセールの頑張りは良く知っているから気にしなくてもいいよ?」
「に、兄さん、何を言い出すんですか!?」
「え?」
セールが慌てて叫んだが、シンザの驚いた声に口元を手で覆って俯いた
すかさずアズールがシンザに見える様にセールの耳を指差した
「え、セール、耳赤い・・・」
「セールもシンザも会話が足りないんだよ、セールの場合、耳は特にわかりやすいから覚えておくといいよ」
「兄さん!?」
「セールはすぐに俯く癖を何とかしないとね、シンザは結構顔に出るよ?」
「え!?」
「セール、シンザはセールを心配して他の職人を募集しようとしたんだから・・・」
「まあ、確かにシンザだけで決めてしまうのは心配だから2人で面接するといい」
「ええ!?」
「今は本当に俺一人で大丈夫なんです・・・」
「ああ、セールがいい加減な仕事をしないのも、仕事でくだらない意地を張らないことも知っている」
「・・・ありがとうございます」
「今のは、いつかの話だ」
「はい」
アズールが照れて視線を逸らせたセールの頭をぐしゃぐしゃと撫でまわした
「兄さん!?」
焦った声を上げたセールに先ほどまで、アズールの言葉に百面相をしていたシンザが微笑んだ
「全く・・・これ以上長引くようならそれぞれに強制的に見合いをさせようと思っていたんだが・・・」
「げ・・・」
「え!?」
「折角の準備を生かせそうにないのは、非常に残念だな」
嬉しそうな顔をしながら、残念そうな口調で話すアズールを、驚いていたセールとシンザがホッとした顔で見た
「で?式はいつにするんだい?」
「まだ、何も決めてないです」
シンザがはにかみながら答えると、アズールが弾んだ声を出した
「いや、楽しみだ」
「え?」
「ランが聞いたら喜ぶに違いない!セールに任せていたら味気無い式になりそうだし、俺も頑張ろう!」
おろおろしているシンザの隣で、セールが深いため息をついた
この話は、第五十七話から書き始めました
そこを1話目として微笑ましいもやっとした感じで完結しようとしていたにも関わらず・・・orz
セールとシンザの微妙な距離感に耐えきれず、設定を変更したところまさかの親世代にまでさかのぼったところからスタートとなりました
(´・ω・`) ショボーン
全体を通してイチャイチャしていたセールとシンザなので、両思いであっさり完結です
リュイとベルデはもっと出てくる筈だったのに、以外と2人の間に波風を起こせず最初と最後にちょこちょこ登場となりました
そしてまさかの、ホラーと思いきやあっさり逝ってしまったノラに少し寂しさを覚えつつ、こんな猫いたら是非飼いたいなんて思いました
随分長くなってしまいましたが、最後まで読んでくださってありがとうございました!!
(●´ω`●)b




