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大切な人たちとの日々  作者: MIK
猫らしくない猫を飼い、子守をする
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第八話 アズールとランと少々リュイ

最近周りに花が咲いているリュイの話を聞き流しながら、本を読んでいると急に教室がざわついた

アズールが顔を上げると教室の入り口に優しそうにノラを撫でていた彼女が立っているのが見えた

「お、ランさんだ、下級生の教室に来るなんて珍しいな」

頭がお花畑になっていたリュイも教室の入り口を見て驚いた顔をした

「知っているのか?」

アズールがリュイに問いかけると、さらに驚いた顔をされた

「知らない方が少ないと思うぞ?才色兼備で有名だ」

「そうなのか、知らなかった」

アズールが、丁度教室の入口にいたクラスメイトと何か話しているランを見て小さく呟いた

「ランさんって言うのか」

「ん?何か手に持っているな?ハンカチか?」

リュイの声に目を凝らすと何故か自分を指差しているクラスメイトに気付いた

ランが自分の方へ真っ直ぐ歩いて来た

「これ、貴方のかしら?」

差し出されたランの手にはノラが無くしてきたハンカチがあった

「ぇ!?」

驚いたアズールの顔を見たランがささやいた

「ちょっといいかしら?」

「はい」

ランの後ろをアズールがついてしばらく歩くと、突然ランが振り返った

「ごめんなさい」

「え?」

突然謝られてアズールがあ然とした

「セールが汚してしまって、それに帰りたがっていた猫ちゃんをずっと引きとめてしまってごめんなさい、心配させてしまったんじゃないかと気になっていたの」

「ノラがお邪魔してたんですか?」

「ノラちゃんって言うのね、久しぶりに見かけて声をかけたら首のハンカチを自慢するみたいに見せてくれて、私がそんな気がしただけなんだけど・・・」

「凄くわかる気がします」

「よかった、で、ちょっと撫ぜてから家に帰ったんだけど後をついて来ていたみたいで玄関を開けたら家の中に入ってしまって・・・」

「すみません・・・」

「いえ、ベビーベッドで寝ていたセールがノラちゃんに気付いて声を上げたので、近づいた瞬間セールがハンカチを引っ張って銜えてよだれだらけにしてしまって、ノラちゃんが項垂れてました」

「ああ、目に浮かぶような・・・」

「さすがに、そのままにしておくことが出来なくて外して洗ったのですが乾く前にノラちゃんがいなくなってしまって、どうしようかと慌てました」

「外すときに噛まれませんでしたか?」

「威嚇されましたが、それ以上に汚れたままなのが嫌だったみたいです」

「ああ」

「ハンカチは学校支給のもので名前の刺繍もしてあったので先生に事情を話して学年とクラスを教えてもらいました」

アズールはイニシャルでいいと言ったのに名前を刺繍した母に始めて感謝した

「それは、ノラが迷惑をかけてすみませんでした」

「いえ、こちらこそ返すのが遅くなってすみませんでした」

そう言ってランが微笑んだ

銀色の髪と赤色の目が冷たい印象を与えるが、笑うと途端に可愛らしくなるランを見たアズールが微笑みながら言った

「いえいえ、確かに心配はしましたが、ほとんどノラが悪いので気にしないでください」

「久しぶりに貴方に会って嬉しかったんでしょう」

アズールの言葉に名乗っていないことを思い出したランが慌てた

「あ、ランと言います」

「アズールと言います」

2人は顔を見合わせて笑った

「それじゃあ」

「はい、ありがとうございました」

頭を下げたアズールを見たランがくすりと笑った

「またね」

そう言うと踵を返して歩いて行った

アズールはその後ろ姿を見ながら、もう2人で会うことは無いだろうがノラを飼う切っ掛けはランさんだったなとあの日を思い出していた

動物にはいつも逃げられるので気にしたことも無かったのだが、楽しそうな1人と1匹を見て“いいな”と思ったのだ

耳の後ろを撫でられてノラが気持ちよさそうにしているのを見た時にはすでに飼うこと決めていた

ノラが自分に頭をこすりつけたときは、内心ほっとしていた

「よし、帰ったら思う存分撫でてやろう」

口元を緩めたアズールは教室に戻るために歩き出した


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