第七十話 ローザとクラース
「それにしても、用意したのなら渡せばいいじゃないですか」
「いや、毎年ニヴィに誕生日会で贈り物をしていいか聞いているのだが、いつも嫌そうな顔をされるのでこれ以上嫌われないように仕方なくだ」
クラースの言葉にローザが唖然とする
「は?毎年わざわざ聞いているのに、お菓子や花束を渡してたんですか?馬鹿なんですか?」
クラースの不甲斐なさにローザが声を荒げると、クラースが叫んだ
「仕方ないだろ!あんな表情で見られたくないんだ!!」
「あんな表情?」
「ああ、眉間に皺を寄せて心底嫌そうな表情だった」
何故かハッっとした表情のローザがクラースを呼んだ
「兄さん・・・」
「何だ?」
「その時のニヴィの顔色は赤くありませんでしたか?」
「いや、見ていられずにすぐに顔から目をそらしたから顔色までは見ていない」
「何か言いませんでしたか?」
「いや」
「そうですか・・・」
クラースに続けざまに質問を浴びせていたローザが、ためらうような素振りを見せた後口を開いた
「実は私も先日始めて気付いたんですが、ニヴィは恥ずかしいと照れ隠しにそうなるみたいです」
「・・・は?照れ隠し?」
クラースがぽかんとする
「はい、顔が真っ赤になっているなら照れ隠しだと思います」
「もしかして、言わないんじゃなくて何も言えなくなるのか?」
「それは、ニヴィに聞いてみて下さい」
「え?ああ、聞いてみるよ」
何か考えていたクラースが、突然固まった
「兄さん?」
助けを求めるような視線をローザに向けながら、クラースが呟いた
「そうだった場合、わざわざ聞いて当たり障りのないものを送っていた俺はかなり嫌な奴では?」
「そうなりますね」
「ええええええええええ!!!」
耳を手で塞いでクラースの叫び声をかわしたローザがクラースに笑いかける
「兄さん、頑張ってくださいね」
「挽回出来るだろうか」
項垂れたクラースをローザが励ました
「協力しますから、大丈夫ですよ」
(ニヴィが兄さんの好みを知りたがってるのは伝えないでいたほうが楽しそうだわ)
「ああ、頼む」
(何だかとても楽しくなりそうだわ!)
上機嫌のローザがクラースに話しかける
「ニヴィに送ろうとしたものの詳細がわかるものはありますか」
「ああ、全て特注だからデザイン画がとってある」
「兄さん、知ってはいましたが重いですね」
(それにしても、全部特注だなんて・・・)
(一体何年分手元に持っているのだろう?)
(いけない、考え過ぎは良くないわ)
何とか気を取りなおしたローザにクラースが答えた
「そうか?綺麗で可愛いニヴィに既製品は似合わないだろう?」
爽やかな笑顔を浮かべながら言い切ったクラースにローザが微妙な顔をした
(ニヴィが綺麗で可愛いのは確かですけどね!!)
ローザは引き出しからいそいそとデザイン画を取り出しているクラースを見ながら微笑んだ
(兄さんとニヴィが嬉しそうで本当に嬉しいわ)
結局、クラースが持っていたデザイン画から装飾品はほぼそろうことが判明した
日付順に並べると、指輪、髪飾り、ブローチ、首飾り、ブレスレット、アンクレット
始めの指輪以外は同じテーマで作られており全てつけてもすっきりまとまるようになっていた
一つ一つに派手さはないが、質の良さと品の良さは際立っていた




