第六十九話 ローザとクラース
クラースは自室で机の上に分厚い冊子を広げて悩んでいた
冊子には所々にしおりが挟んであり、ただ広げているだけではないことは誰が見ても分かるような状態になっていた
クラースが広げていたページにしおりを挟もうとしたとき、誰かが部屋のドアをノックした
「どうぞ」
ノックに返事を返しながらしおりを挟み冊子を閉じてから、ドアの方へ向き直るとローザが入って来るところだった
ローザはクラースが自分を見ているのを確認してから真剣な顔で口を開いた
「兄さん、聞きたいことがあります」
「何だ?」
「ニヴィの誕生日会で何を送るつもりですか?」
(兄さんの机の上にある冊子、ジュエリーサンプル集だわ)
(それに、表紙の色、あれは最新号だわ)
ローザがクラースの机の上のにある、所々しおりの挟まった冊子を見て小さく感心したような声を出した
(お母さんに見せてもらったばかりだから間違いないわ)
(兄さん、個別に取り寄せているのかしら・・・)
「今まで渡せていなかった分も送っていいのだろうか?」
取り留めもないことを考えていたローザがクラースの声にハッとする
「何で準備していたのに渡さなかったんですか?」
「あの日まで“友達”でいるのも嫌なくらい嫌われていると思っていたから」
「ぇ・・・」
「それでも、何も送らないことは出来なかったからお菓子や花束を渡していたんだが、どうしても準備してしまってな」
「ニヴィは、“友達”だから特別なものじゃないのだと言っていましたよ」
誕生日会でその日の主役なのに、険しい顔をした女たちに囲まれていたニヴィを思い出しながらローザはクラースに伝える
今見たことはクラースに言わないでとニヴィに言われているので、あえて曖昧に伝えた
この言い方ならニヴィとローザの会話ともとれるだろうとローザは思っていた
「ん、誰に?」
それなのに、あっさり見破られた上にこんな時だけ察しの良いクラースに苛立ったローザが叫んだ
「兄さんの外見を気に入っている取り巻きの皆さんに問い詰められてました!!」
「取り巻き?そんなものはないぞ」
「鈍感過ぎます!」
(何故あんなに見られているのに気付かないのか、いやニヴィしか見ていないから周りに気付かないのか)
ローザは額を押さえてため息をついた
クラースが何かを思い出したように呟いた
「そう言えば、ジヴィのファンクラブはあったような・・・」
「へぇ、そうなんですか」
(そんなものがあるなんて噂もないし、気付かなかった・・・)
(目ざとい女子にすら気付かれていないなんて、きっと兄さんの取り巻きのような女たちではないわよね)
(こんなこと知りたくなかったわ・・・)
クラースは額を押さえたまま動かなくなったローザに心配そうに声をかける
「ど、どうしたローザ!?」
恨めしそうな目をしたローザがクラースを睨んだ




