第六十三話 リュイとニヴィとジヴィとクラースとローザとアズールと少々ランとベルデ
「クラース、主役がいないと始められないんだが・・・」
クラースに呼びかけながらドアを開けたリュイがニヴィを抱き締めている息子を見て言葉を失った
「ニヴィ、大丈夫かい?」
「はい、大丈夫です!」
ニヴィはとっさに足を踏みつけクラースが怯んだ隙に、腕の中からするりと抜け出してリュイに答えた
「ニヴィ、結構痛い」
目の前で息子がぞんざいな扱いを受けたというのにリュイは息子を無視してニヴィの心配をした
「クラースが何かしたのなら謝るよ」
緩んだ顔をしている息子を冷たい目で見ながら、優しくニヴィに話しかけた
「いえ、本当に大丈夫です」
顔を真っ赤にしながら答えるニヴィを見てリュイは安心したようだ
「そうか、ならいいのだが、君に何かあったらアズールに何と言ったらいいか・・・」
リュイの視線がニヴィの背後へ向けられ、娘を抱き締めているジヴィを見て言葉を切った
ジヴィはローザをゆっくり離すと立ち上がりリュイの前まで歩み寄った
「リュイさん、ローザとの交際を許していただけますか?」
「アズールは知っているのかい?」
「いえ、今日帰ってから父に話し、それからリュイさんに了承してもらいに来るつもりでしたので知りません」
「そうか、後でアズールとランが来たら話そうか」
リュイはジヴィに笑いかけた後、クラースの方を向いた
「クラース、お前もだぞ」
「はい、父さん」
「では、そろそろ行くとしよう」
「はい」
庭に出ると、クラースとニヴィに視線が集まった
会場のあちこちで悲鳴が上がる中、クラースがニヴィのネックレスを掬い上げて手の平にのせニヴィに笑いかけた
ニヴィはクラースを見上げて嬉しそうに笑った
クラースが参加者に挨拶をして回る間もずっとニヴィは隣にいた
「アズール、すまない」
「どうした、リュイ」
「ジヴィは私にきちんと了承を得ようとしたのに、うちの馬鹿息子は何を考えているのか」
「確かに、交際の許しを飛ばして結婚の許しをくれと言われてしまいそうだな」
2人の視線の先にはクラースがニヴィにちらちら視線を送っている周りの男たちを威嚇していた
「まあ、あんなに嬉しそうな娘を見た後では何も言えないが・・・」
ニヴィはクラースにおめでとうと言いに来る女たちに睨まれても背筋をぴんと伸ばして笑顔で答え、自分を見て嬉しそうに笑うクラースと見つめ合っていた
「ん、あちらの方で人だかりが出来ているな」
「ああ」
人だかりの方へ歩いて行くと、どうやらテーブルの周りを少し距離を置いて人が囲んでいるようだった
「ベルデ、何をしているんだい?」
「ラン?」
中心になっている机には互いの妻がにこやかに座ってお茶を楽しんでいた
「リュイ、丁度よかったわ、何か食べるもの取って来てくれないかしら?」
「アズールは、飲み物をよろしくね?」
「ああ」
「わかった」
妻たちに送り出された夫たちが頼まれたものがある辺りを振り返ると、周囲の人が一斉に道を開けた
食べ物と飲み物を持って帰ると、丁度椅子に座ろうとしていたジヴィとローザが持って来たものをテーブルに置くのを手伝ってくれた




