第五十九話 ジヴィとローザとニヴィ
「座ろうか」
「ええ、そうね」
ジヴィが声をかけるとニヴィはそれに答え、ローザがうなずいた
ニヴィは何故かジヴィの向いにあるソファーに座ると、隣に座ろうとしたローザに笑いかけた
「ジヴィの隣が空いているわ」
ニヴィはすでに眉間に皺が寄り始めているジヴィを見てくすくす笑った
「ジヴィ、隣空いているわよね?」
「ああ」
ニヴィに笑われたジヴィが不機嫌そうに答えた
一瞬驚いたような顔をしたローザだが視線を泳がせた後、小さく俯くとジヴィの隣に座った
ソファーの反対側の端っこにローザが座ったのを見たジヴィが、険しい表情を浮かべた
ニヴィの隣に座るときの距離と比べて倍以上あるその距離に苛立ったジヴィは、苛立つ理由を昔と違ってニヴィにだけ懐いているローザに疎外感を感じるからだと結論付けていた
「ジヴィ、消えなくなるわよ」
「ん?」
咄嗟に意味がわからずジヴィが聞き返すと、ニヴィは自分の眉間を指さした
「ああ、気を付けるよ」
ニヴィとローザに紅茶が運ばれて来た
ジヴィにも勧められるが十分だったので断ると、隣で2人がお喋りを始めた
(ああ、いつも通りだな)
2人の楽しそうな声を聞きながら、ジヴィがクッキーに手を伸ばした
ジヴィがクッキーをかじるとガリッと少し大きな音がした
少し焦げたクッキーに当たったようだが気にせず食べて、もう一枚と手を伸ばしたところで隣から声が聞こえないことに気付いた
ジヴィが訝しげに顔を上げると向いに座ったニヴィが見えた
ニヴィは目をきらきらさせて微笑んでいた
クッキーを食べている間に何があったのかと思い、ニヴィが駄目ならローザに聞こうとジヴィが隣に顔を向けた
「え?」
先ほどより僅かに近づいていたローザが胸の前で両手を握りしめ自分を凝視していた
「っ///」
久し振りに真っ直ぐ視線が合う、ローザが必死に自分を見つめていた
しばらく見つめ合っているとローザが何かを言おうとして口を開き、けれど何も言わずに口を閉じた
ジヴィは急かさないようにじっと待ったが、ローザは唇を噛み締めるとジヴィの視線から逃げるように俯いてしまった
それを見たジヴィの顔が険しくなり、眉間の皺が深くなった
俯いてしまってローザの顔が見えないので、視線を下げると強く握りしめられた手が目に入る
その瞬間ジヴィの身体が自然に動いた
ジヴィがローザの手を取ると、ローザが怯えたようにびくりと肩を動かした
「手を傷つけてしまう」
ローザが握りしめていた手を開くと手の平にくっきりと爪の跡がついていた
ジヴィが労わるようにその跡をなぞった
視線を感じて顔を上げると、目を見開いて頬を染めたローザと目が合った
ローザが何かを言おうとして口を開いた
ジヴィは手の平をなぞっていた手を離すと、その手で先ほど噛み締めていた唇に優しく振れた
ローザとしっかり目を合わせながら続きを促す
「何?」
首まで真っ赤になって、ぴしりと固まったローザが気を失った
そのまま自分の方に向って倒れて来たローザをジヴィが受け止める
ジヴィはローザの頭を自分の膝の上に乗せ、ローザの顔を眺めていると向いから咳払いが聞こえて来た
「ニヴィ、何?」
顔を上げること無くジヴィが答えると、ジヴィの浮かれた声にニヴィが呆れたような声を出した
「ジヴィ、顔が緩んで大変なことになっているわよ?」
顔を隠そうともせず、じっとローザを見つめているジヴィにニヴィが問いかけた
「で、いつからなの?」
「自覚したのは、さっきだな」
「・・・随分鈍いのね」
ニヴィが不機嫌そうに低い声で唸るように呟いた
「へえ、ニヴィが知っていること後で詳しく聞かせて」
「ローザに直接聞きなさいよ!」
「それもいいね」
ニヴィが苛立ちながら叫ぶと、ローザの頬を撫でながらジヴィが嬉しそうな声で答えた
「もしかして、ローザの作ったクッキーなのかな?」
ジヴィの緩み切った顔と声にニヴィが呆れたように呟いた
「それも、ローザに直接聞きなさいよ・・・」




