表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大切な人たちとの日々  作者: MIK
猫らしくない猫を飼い、子守をする
5/94

第五話 アズールと野良猫

来たときと同じように裏口から出たアズールは、鍵の閉まる音を聞きながら自分を睨み付けていたリュイの顔を思い出してにやりと笑った

「しばらく、この話題で楽しめそうだな」

ベルデがリュイに抱き付いたのを見届けて、こっそり部屋を後にした

見送ってくれた“彼”にも伝言したし、“友達”も動き始めたころだろう、ポケットから先ほど返す際に抜いておいた紙を取り出して眺める

「やり返そうなんて気が起きないくらい上手くやらないとね、とても楽しそうだ」

楽しそうに呟いたアズールの顔を見た野良猫が尻尾を膨らませて体勢を低くし威嚇した

「嫌だな、動物は嫌いじゃないよ?」

アズールと視線の合った瞬間一目散に走って逃げた野良猫に微笑んだ

「良い判断だ」

「あら、どうしたの?」

野良猫が走っていった方から声が聞こえた

「今日は人が多いから驚いたの?大丈夫よ?」

声の合間に猫がごろごろと機嫌良く喉をならす音が聞こえた

野良猫が彼女の手に自分の頭をこすりつけてからンニャと短く鳴いた

「もう大丈夫そうね、セールが待ってるからもう行かなきゃ」

彼女が去るとあくびをした後、毛づくろいをし始めた野良猫にアズールがそっと近づいた

しっかり首の後ろをつまむように持ち上げると、ウギャァーと大きな鳴き声を上げて暴れ出した

「おい、野良」

暴れていた野良猫がアズールと目が合うと、ぴたりと鳴き止んで耳を後ろに倒し、そっぽを向いた

大人しくなった野良猫を抱きかかえると、そっぽを向いたままの耳の後ろを優しく撫でた

段々身体の力を抜いて行く野良猫に思わずアズールがくすくす笑うと、野良猫がこちらを見上げた

先ほどまで自分を撫でていたアズールの指をペロリと舐めると、野良猫はニャァーンと鳴いた

期待を込めたような目で野良猫に見られたアズールは首の後ろを優しく毛の流れにそって撫でる

腕の中の野良猫がアズールの腕に顎を乗せてごろごろと喉を鳴らし始めた

「野良、うちに来るか?」

野良猫が顔を上げてアズールをじっと見つめた

ゆっくり尻尾を振りだした野良猫の顎をアズールが撫でた

「来るか?」

アズールが手を離すと野良猫がンニャと短く鳴いて頭をこすりつけて来た

野良猫を一旦地面に降ろすと、ポケットからハンカチを取り出してこちらを見上げている野良猫の首に巻き付けた

「今はこれしかないんだ、すまんな」

巻き終えたアズールの手を野良猫がペロリと舐めた

「さあ、行くか」

歩き始めたアズールに尻尾をぴんと立てた野良猫が続いた


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ