第四十一話 セールとシンザ(元ノラ)とニヴィとジヴィと少々アズールとラン
シンザはしゃがみ込んでもう一度ニヴィを抱き締めた
ニヴィがシンザの耳元に口を寄せてささやいた
(お姉ちゃんはおじちゃんのことが好き?)
ニヴィがもじもじしながらシンザを見上げた
我に帰ったシンザが頬を染めながらニヴィにささやいた
(私はおじちゃんのことが大好きよ)
ニヴィが目をきらきらさせてシンザを見上げた
シンザがそっと口の前に人差し指を立てるとニヴィも真似をした
「私とニヴィだけの秘密ね!」
「お姉ちゃんと私だけの秘密!」
シンザとニヴィがくすくす笑った
ジヴィがセールの袖を引っ張ったので見下ろすと、手招きしたジヴィの前にしゃがみ込んだ
しゃがみ込んだセールの頭にジヴィが両手を乗せるとぐしゃぐしゃと掻きまわした
ぽかんとしたセールにジヴィが言った
「僕が頑張ったら父さんが褒めてくれるんだよ!」
「そうか」
「仲間外れにされても怒らないのは凄いよ」
「ありがとう、ジヴィ」
セールがジヴィに手招きすると、セールに顔を寄せたジヴィにささやいた
(仲間外れにされるのは嫌だが、シンザが楽しそうなのは好きなんだ)
ジヴィが不思議そうにシンザを見た
「ジヴィもいずれ分かるさ」
「うーん?」
セールがジヴィの頭を軽くぽんぽんと叩くとジヴィが唸り声を上げた
(お父さんとお母さんが仲良くしていると嬉しいだろう?)
(うん!)
(俺はシンザが嬉しそうに笑うと嬉しいんだ)
(おじさんはお姉ちゃんが大好きなんだね!)
(ああ、ジヴィはお父さんとお母さんが大好きなんだな)
(うん!ぁ、ちゃんとおじさんも好きだよ?)
慌てて付け足したジヴィにセールが小さく吹き出した
「ジヴィ、ありがとうな」
「ニヴィ、ジヴィ、2人とも戻っておいで」
アズールが2人に呼びかけると、2人ともランとアズールの方へ駆けて行った
「お邪魔しました、また遊びに来ます」
「ああ、いつでも来い」
セールとシンザがランとアズールに頭を下げ、ニヴィとジヴィに手を振った
アズールの家を後にしたセールとシンザが、イオのいるランとセールの実家に向った
シンザがセールの隣を歩きながら、アズールの家に行くのを渋っていたセールが上機嫌なのを見てくすくす笑った
「仕方ないだろう、弟と妹がいたらこんな感じだったのかなとか考えたんだよ」
シンザの笑い声に照れくさそうにセールが答えた
「あら、姉さんだって兄弟みたいなものでしょう?」
シンザが不思議そうにセールを見ると、セールが苦笑した
「イオは俺より少し先に産まれたからって小さいころから姉気取りで・・・」
何かを思い出したようなセールが途中から情けない顔を浮かべた
「ふーん、じゃあ姉さんはセールにとっても姉さんなんだ」
シンザの言葉にセールが複雑な顔をした
「ああ、物凄く譲歩するとそうなるな」
セールの顔を見たシンザがにやにや笑って悪乗りをした
「じゃあ、帰ったら姉さんって呼んでみる?」
「呼ばない!」
シンザの顔を見て一瞬固まったセールが叫んだ
必死な顔をしたセールを見たシンザが声を上げて笑った
セールは眉間に皺を寄せ、前を向くとシンザを置いてすたすたと歩き出した
シンザは歩き出したセールの背中をじっと見つめて呟いた
「私はセールにとって“妹”じゃないの?私は家族じゃないの?」
込み上げて来そうな涙を堪えるために目をきつくつむったシンザを振り返ったセールが呼んだ
「シンザ、何してるんだ?早く行くぞ!」
「ちょっと目にゴミが入っちゃって、今行くわ」
シンザが答えると早足で戻って来たセールが、手でシンザの顎をそっと持ち上げると目を覗き込んだ
「大丈夫か?」
心配そうにシンザを見るセールにシンザが慌てて答えた
「だ、大丈夫!瞬きしたら取れたみたい」
シンザの澄んだ茶色の目をじっと見つめていたセールが呟いた
「ならいいが・・・」
近過ぎる距離に恥ずかしくていたたまれなくなったシンザがセールから目を逸らすと、我に帰ったセールがシンザの顎から手を離して歩き出した
「帰ったら一応イオに見てもらうんだぞ!」
「ええ」
少し怒ったような口調で早口に言ったセールに、シンザが少し離れて後ろを歩きながら答えた
にやけた顔で耳の赤いセールと真っ赤な顔で俯きながら歩くシンザをすれ違う人たちが不思議そうに見ていた




