第三十七話 セールとシンザ(元ノラ)
地元に帰りついたセールがのんびりしている周りの人たちにいらいらしながら鞄から手紙を引っ張り出した
書かれている地図を頼りにシンザの店を目指して歩き始めた
だいたいの場所についたセールが辺りを見回すと、店先の花に水をやっている女の人に目が釘づけになった
「シンザ?」
セールがおそるおそる呟くと、女の人が振り返っておそるおそる呟いた
「セール?」
8年振りに会ったシンザとセールがふらふらと互いに歩み寄った
「本当にセール?」
「ああ」
「どうしたの?」
「イオが・・・」
「姉さんがどうかしたの?」
セールがシンザに手に持っていた手紙を差し出した
受け取ったシンザが目を通して頬を染めた
「シンザ、最後の文を読んでくれ」
「分かったわ、えっと、シンザが最近店に泊まり込んで家に帰って来ません、誰かいい人が出来・・・ってええええええ!?」
驚いて叫び声を上げたシンザにセールがホッとしたような顔をして呟いた
「イオのやつ・・・」
「姉さんったら何を考えているのかしら」
シンザが道行く人たちの視線に気付いてセールを店の中に案内した
店内を見渡したセールが呟いた
「いい店だな」
「ありがとう、まだ始めたばかりなんだけどね」
カウンターの横のドアが開いているのに気付いたセールがシンザを見た
「中を見てもいいか?」
「ええ、今は倉庫としても使っているわ」
部屋の中に入ったセールが机の上を見て眉間に皺を寄せた
「シンザ、職人を雇っているのか?」
「いいえ、雇ってないわよ」
「机の上に・・・」
突然慌てだしたシンザが机の前に立った
「えっと、恥ずかしいので見ないでください・・・」
真っ赤になって俯いたシンザをセールが不思議そうに見ていると、顔を上げたシンザが呟いた
「あ、手紙行き違いになったのかな?」
ハッとしたセールが鞄の中から、分厚い方の手紙を取り出してその場で封を切ると読み始めた
目の前で送った手紙を読みだしたセールに頬を染めたシンザがセールに声をかけた
「私は上でお茶入れてくるから・・・」
「ああ、わかった」
セールはシンザを見て返事をして、すぐに手紙に視線を戻した
シンザがミニキッチンでお湯を沸かしながら、自分の頬を抓って笑っていると、セールが上がって来た
「何をしてるんだ、シンザ?」
「えっと、夢じゃないことが分かって嬉しいの」
「そうか」
「俺も手紙ありがとうな」
「そこの椅子に座ってて、今お茶持って行くから」
「わかった」
嬉しそうに微笑んでセールを見たシンザにセールも微笑み返した
しばらくして、セールが何気なく部屋を見渡していると、シンザが机の上にお茶を乗せたお盆を置いた
セールの前にお茶の入ったカップを置いたシンザにセールが声をかけた
「シンザ?」
「ここにカップが一つしかなかったのよ、店の来客用は下の給湯室に置いてあるんだけど、取りに行くのが面倒で気にしないでくれると嬉しいわ・・・」
計量カップでお茶を飲んでいるシンザがセールから目を逸らした
イオの手紙に書いてあったことを心配する必要がなくなったセールがにやりと笑ったが、目を逸らしていたためシンザは気付かなかった




