第三十四話 セールと兄弟子、他の皆様
セールが届いた手紙を読んでいると兄弟子が話しかけて来た
「嬉しそうだな、何かいい事でも書いてあるのか?」
「いいえ、気にしないでください」
即答したセールに兄弟子がにやりと笑った
「そうもいかないんだよな、手紙が届くたびにお前のデザイン画が凄くなっていくんだから興味も湧くさ」
「何言ってるんですか、俺なんてまだまだですよ」
「今わな・・・」
「何か言いましたか?」
「いや、彼女からの手紙か?」
「違います、幼馴染の近況です」
「へえーそれにしちゃ、いい顔して読んでいるな」
「どうしたんですか?」
突然声をひそめた兄弟子にセールが怪訝な顔をした
「こっちの会話に店にきている女たちが聞き耳立ててるぞ?」
「俺を巻き込まないでくださいよ・・・」
呆れた顔をした兄弟子がセールを小突いた
「何言ってるんだ、お前は・・・」
「痛いじゃないですか!」
「いいか?俺が合図したら顔を上げて店を見ろ、俺は店から見えないように移動する」
「何なんですか・・・」
少し離れて座った兄弟子をセールが面倒臭そうに見た
「ちゃんと作業してろよ」
セールは少し離れた机で作業を始めた兄弟子を見て、手紙を読むために中断していた作業を始じめた
店がざわざわし始めると、今まで何も言わなかった兄弟子がセールに合図した
「キャー」
「こっちを見たわ」
「いいえ、こっちを見たのよ」
「何言ってるのよ」
セールが顔を上げて店を見ると、歓声と悲鳴が湧き起った
「は?」
訳が分からず首を傾けたセールの隣に兄弟子が机を持って移動して来た
店の方でまた歓声が上がった
それを気にすること無く兄弟子がセールに話しかけた
「作品ももちろんだが、お前自身を気にしている女たちが大勢いるってことが分かったか?」
「・・・」
「おぃ、まあいいが、要するに俺が言いたかったのはにやけた顔をしてここで手紙を読むなってことさ」
「にやけてません」
「最近は彼女からの手紙だって噂で持ち切りだ」
「気を付けます」
「お前はもうちょっと自分の外見が周りに与える影響に興味を持った方がいい」
「すみません」
セールが軽く頭を下げると、兄弟子がぐしゃぐしゃとセールの頭を撫でまわした
セールの上げた顔を見た兄弟子が、セールに問いかけた
「きょとんとしてどうした?」
「兄を思い出して・・・」
「そうか」
「ここに来るときにも世話になった、自慢の兄なんです!」
「そうか、そうかそう言われると兄貴も嬉しいだろうな」
「そうだといいんですが・・・」
自信が無さそうに呟いたセールを見た兄弟子がくすくす笑った




