第三十三話 シンザ(元ノラ)と師匠とイオ
シンザが修行を始めてから2年たったある日道具を片づけて帰る仕度をしていると、師匠に話があると声をかけられた
シンザは師匠に返事をした後軽く唇を噛み締めた
師匠の前にシンザが座ると、師匠がしっかりシンザを見て言った
「これ以上修行しても、お前の腕は上がらない」
シンザは一瞬顔を下げたがすぐに顔を上げた
「はい、今日まで指導していただいてありがとうございました」
「今後はどうするのだ?」
「ここで学んだ基礎知識をいかしていつか店を開こうと思っています」
「そうか、職人のあてははるのか?」
「・・・ないです、店を開いてもしばらくは自分で仕入れたものを売ろうと思っています」
「そうか、しばらく弟子はとらんつもりだ、気が向いたらまた来るといい」
「ありがとうございます」
「頑張れよ」
「はい!」
師匠に一礼してシンザが作業場を後にした
シンザは家に帰ると自室に駆け込んだ、ベッドに突っ伏して声を上げて泣いた
途中、イオが泣いているシンザを心配そうに見に来たが、結局何も言わずにそっとドアをしめた
泣き止んだシンザがベッドから起き上がり、机の引き出しから紙の束を取り出した
破ろうとした手を止めると、まとめてくるくると巻き紐できつく縛ると引き出しの奥に仕舞った
顔を洗うために階下へ降りたシンザにイオが声をかける
「シンザ、大丈夫?」
「もう、大丈夫よ、ありがとう」
「セールから手紙が届いているんだけど一緒に読む?」
「もちろん!顔を洗ってくるから待っててね」
「わかったわ」
イオとシンザが手紙を読み終えるとシンザがむぅっと唸って頬を膨らませた
「姉さん、何でセールに私の失敗のこと教えたの?」
「私自身のことで書くことがないのよ・・・」
イオが自信が無さそうに呟いた
「ラン姉さんの先輩とはあんなに分厚い手紙をやり取りしているのに?」
「あ、あれは、自分のことを書いているわけじゃないもの・・・」
シンザがイオと先輩の手紙のやり取りについてからかうと、頬を染めたイオが早口で捲し立てた
「ふーん」
「そんなこと言うんだったらシンザが返事を書けばいいじゃない、いつも私が書いてばかりいるのは不公平だわ」
イオを見ながらにやにやしていたシンザに、イオがセールからの手紙を突きつけた
「書くことないから無理よ」
「シンザ、今していることはセールには言わないつもりなの?」
言い切ったシンザを不思議そうに見ながらイオが問いかけると、笑顔を浮かべたシンザが立ち上がる
「上手くいってから言うつもりだから、姉さんうっかり返事に書いちゃ駄目なんだからね」
「ちょっと、また私が書くの?」
シンザがくすくす笑いながら階段を上っていった




