第二十話 ベルデとリュイ(&男の人)
ベルデがリュイの家の呼び鈴を鳴らすと顔見知りになった男の人が出迎えてくれた
そのままリュイを呼びに行こうとした男の人を止めると、ベルデは人差し指を唇にあてて微笑んだ
それを見た男の人がベルデに少し待っていてくださいと言うとその場を離れた
ベルデが待っているとトレイにお茶とお菓子を乗せて戻って来た
リュイの部屋まで運んでくれるようだ
「ありがとう」
「いいえ、お気になさらず」
「では、行きましょうか」
「ええ」
リュイの部屋のドアをノックすると中からリュイが返事をした
そのまま入っていった男の人についてベルデも部屋に滑り込んだ
「お茶をお持ちしました」
「ああ、そこに置いておいてくれ」
机に向って何かしているリュイは顔も上げずに答えた
「かしこまりました」
「そろそろ休憩なさったらどうですか?」
「ああ、もう少ししたら休憩する」
「では、失礼いたします」
男の人はベルデをちらりと見て一礼してから部屋を出て行った
ベルデは机に上で真剣に何かをしているリュイの邪魔にならないようにソファーに座ってじっとリュイを見つめていた
しばらくして、リュイが手を止めて伸びをした
首を軽く動かしてから何故かぴたっと動きを止めて、ばっと後ろを振り返った
ソファーに座ってリュイを見つめていたベルデと目が合うと驚いて口をぱくぱくさせた
「リュイ、どうしたの?」
「ベ、ベルデ、いつからそこにいたの?」
「お茶を一緒に飲もうと待っていたんだけど、すっかり冷めてしまったわ」
ベルデがいかにも残念そうにそう答えるとリュイが呟いた
「あいつめ・・・」
「リュイ?」
「いや、何でもない」
「そう」
リュイがベルデの隣に座った
「入れなおさせようか?」
「大丈夫よ、冷めていてもいつも美味しいもの」
ベルデが嬉しそうに言いながらお茶を飲んでいるのをリュイが不機嫌そうに見た
「どうせ、俺はうまくお茶を入れられないさ」
リュイの言葉にベルデが答えた
「私が美味しく入れられるのだから問題ないじゃない?」
リュイが満面の笑みを浮かべてベルデを抱き締めた
「それは、俺にお茶を入れてくれるってことだよね?」
「・・・ええ、そうよ、何か?」
ベルデがぷいっと顔を逸らしたが赤くなっている耳に気付いたリュイがにやにやした
「リュイ、折角綺麗な顔なのに崩れているわよ?」
「見てないのに本当にそうかわからないだろう」
「リュイのことだもの見なくても分かるわ」
リュイにからかわれたベルデが、逸らした顔を戻す
「ほら、変な顔!!」
リュイの顔を見上げて嬉しそうに笑ったベルデをリュイがさらに抱き締めた
「リュイ!?」
リュイの腕の中でベルデが焦ったような声を上げた
「もう少しこうしていていい?」
「・・・ぇぇ」
リュイがベルデに声をかけるとベルデがささやくような声で答えた
「ベルデ」
「何?」
「もうしばらくしたら、ベルデのご両親に交際の許しをもらいに行っていいかな?」
「え!?」
「まあ、父さんに相談したらあちらの家もそれは小さい頃にしたあの約束で了承済みだと言われたけど、ちゃんとしたいんだ」
「懐かしいわね、ええ、分かったわ、いつごろになるの?」
「今都合を伺う手紙の下書き中だよ、どうしても失敗したくないから、恥ずかしいけど後で父さんに見てもらってから出す予定だ」
「そう、頑張ってね」
「ああ」
ベルデの言葉にリュイが微笑んだ
「ああ、そう言えばアズールがね、・・・痛いじゃない!!」
突然不機嫌になったリュイがベルデの両頬を軽く引っ張った
「そんなに嬉しそうにアズールの名前を呼ぶベルデが悪い・・・」
リュイはそう呟くとベルデから顔を逸らした
「仕方ないじゃない、昔から知っていて兄さんみたいな存在なんだから!」
「へー」
まるで興味が無いように呟いたリュイにベルデが声を荒げた
「もう、リュイだってお世話になってるじゃない」
「それとこれは別の話だ」
「何が違うのよ・・・」
ベルデの呆れたような声にリュイが真剣な顔をしてベルデの顔を覗き込んだ
「ベルデは俺のだ」
「リュイだって私のよ」
目をしっかり合わせて言い切ったベルデに満足したリュイが続きを促した
「で、アズールお兄ちゃんが何だって?」
「やっと、ランさんと上手くいきそうなの!」
「それは、よかったな!」
嬉しそうに笑うベルデを抱き締めながらリュイがにやりと笑って呟いた
「これで、心配しなくてすむ」
「リュイ、何か言った?」
「いや、何も言ってない」




