第二話 アズールとベルデ、他の皆様
「取り巻き連中といるときのリュイは辛そうだぞ?」
「そんなことない!」
「ああ、お前が近くにいる時はあえて楽しそうに見える様にしてるからな」
「ぇ?」
「俺が取り巻き連中のやってることに気付いているんだぞ、あいつが、気付いてないわけないだろう?」
「お前に迷惑かけないように機嫌を取ってるんだよ」
「え!?」
「それでも、お前のクラスに行けば目ざとい女子に気付かれてしまうから、行くことも止めた」
「最近、嫌がらせ受けてないだろう?」
「っ!!」
「リュイがな、俺に言ったんだ」
「何?」
「お前が俺を頼るのを見るのが辛いって」
「自分は傷つけるだけで、何も出来ないって、ちなみに俺の勘では悩み過ぎて知恵熱出してるんじゃないかと思っている」
「ば、馬鹿なんじゃないの!」
「お前がそれを言うのか?」
ベルデが顔を伏せた
「で、どうするんだ?まあ、今まで通りでいいんじゃないか?」
ベルデが顔を上げてアズールをじっと見た
「嫌よ、リュイは私のものよ!!」
「始めからリュイの手を取ればこんな面倒なことにならなかったのにな」
「だって、私リュイに好かれるようなこと何一つしたことないのに・・・」
「リュイだって、お前を悲しませているだけだ」
ベルデがアズールを見て目を見張った
「アズール、怒っているの?」
「当たり前だ、お前もリュイも最後まで俺に頼ろうとしないんだからな」
「え?私は頼ってるじゃない」
「一人で勝手に話して勝手に納得して帰る」
「ぅ」
「お前のは悪口でも愚痴でもない、俺に意見すら求めない」
「ごめん」
「あいつだってそうだ、何が勝手なこと言ってごめんなだ」
「アズール!ごめん、ありがとう」
無表情に淡々とした口調で話し続けるアズールをベルデが止める
「リュイの傍にいるために力を貸して欲しいのアズール、お願い」
ベルデがアズールとしっかり目を合わせて頼むとアズールは泣きそうな顔をして笑った
その顔を見たベルデは最近アズールの笑う顔を見ていなかったことに気付いた
「今までありがとう、これからもよろしくね」
「ああ、当たり前だ」
アズールは先に立ち上がり、まだ座り込んでいたベルデに手を差し出した
「ありがとう」
差し出された手を取って立ち上がったベルデは視線を感じてそちらへ顔を向けた
「え?」
「どうした?」
顔を向けた先の光景に驚いて声を上げたベルデの視線の先を、アズールが怪訝そうに見た
「何あれ」
こちらを拝むように手を合わせながら見ていた何人かが、ベルデと目が合うと一斉に目をそらした
「ああ、気にするな、アレはお前らのと違って無害だ」
アズールがにやりと笑って、その人たちに向って手招きをした
アズールの笑みを横目で見たベルデの背中を冷たいものが流れ落ちていった
途端に公園の様々なところから人がわらわら集まって来た
「ひっ」
余りに異様な光景にベルデが短く悲鳴を上げる
「どうぞ」
その中の一人が集まった人たちから集めた紙片のようなものをまとめてアズールに差し出した
「ああ」
アズールが受け取って、渡されたものに目を通し始めた
「へえ」
「ア、アズール?」
「ちょっと待っててくれないか」
アズールは紙片を二つの山に分け、多い方の山を先の人に手渡した
「こっちはまだ泳がしといていいよ」
「はい」
少ない方の山を手に取ると、上から数枚取って残ったものを手渡す
「待たせてすまなかったね、もう好きなように詰んじゃっていいよ」
「どんな結果になるか楽しみにしているね」
「はい!」
アズールの言葉に嬉しそうな顔をした人たちが意気揚々と去っていった