第十八話 アズールとベルデ
何とか家に帰りついたアズールをベルデが訪ねて来た
俯いたまま顔を上げないベルデにアズールが声をかけた
「どうした?」
落ち込んだ声にベルデが顔を上げてアズールを見て目を見開いた
「アズール、顔色が悪いわよ、大丈夫?」
「病気ではないから大丈夫だ」
「そう、私で良ければ話を聞くわよ?」
アズールが何かを考える様に視線をそらすとベルデが諦めているかのように呟いた
「まあ、そう言っても話してくれないんでしょうけど・・・」
自分で言いながらまた、俯いてしまったベルデの耳にアズールの声が聞こえた
「・・・聞いてくれるか?」
ベルデはパッと顔を上げて答えた
「もちろんよ!今度は私の番よ」
アズールの話を聞きながら何かに気付いたようなベルデが自分の額を押さえてうめき声を上げた
「ベルデ?」
「アズール、最初に会ったときランさんはその先輩にわざわざ了承を得てからアズールのところに来たのね?その間その先輩はずっとそこでランさんを待っていたの?」
「ああ、ランさんが俺を指さしてから何か話していた、先輩はランさんに頷いて俺の方に会釈をしてから先に歩いて行った」
「その先輩と直接話したことはあるの?」
「ない」
「ランさんを見かけたときいつもその先輩と2人だったの?」
「いや、最初は良く一緒なのを見かけたけど最近は見てない気がする」
「そう、ここからは例えばの話なんだけどいいかしら?」
「ああ、わかった」
「まず、自分が研修を始めたころのことを思い出して」
「ああ」
「研修中で例え休憩中だったとしても、比較的会うことの出来る人にわざわざ先輩を待たせてまで何かを伝えようとするかしら?」
「急ぎなら・・・」
「急ぎだったの?」
「・・・いや」
「もし、アズールがランさんとどこかに行く途中、歩いていて私に会ったらどうする?」
「しばらく見ていて、長くなりそうならランさんに先に行くと伝えてから移動する」
「もし、ランが話に行ったのが自分の知らない男の人だったら?」
「それは、気になってちらちら見てしまうかもしれないけれど、さっきと同じだ」
「アズールは研修先で指導してくれる先輩を自分で選べた?」
「いや」
「最初は一緒に行動することが多かったんじゃない?」
「ああ」
「アズールがランさんを見かけたようにランさんもアズールを見かけているかもね」
「それはあるかもしれないが・・・」
「研修中ランさんに声をかけられたことは?」
「ない」
「アズールの先輩は男の人?」
「いや、女の人だ」
「それで、最初にランさんから声をかけられてから何年たったの?」
「・・・3年、もうすぐ4年くらいかな」
「その間ランさんを見かけては避けていたの?」
「ああ」
「それ、いくら鈍い人だとしても自分が避けられているのくらい気付くわね」
アズールが少しの間何かを考えていたが、ベルデを見て言った
「もう少し話を聞いてくれるか?」
「ええ、もちろんよ」
「ありがとう」
まるで聞くことが当たり前のように、自分の話を真剣に聞いてくれるベルデにアズールが微笑んだ




