第一話 5
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その頃エルウィンは、救急隊に連絡を入れ、二人の子供を預けていた。
そして、廃墟同然となった貧民街の調査の依頼を“特区調査機関”と呼ばれる場所へしていた。
“特区調査機関”という機関は、特区で起こった事故、災害などの、原因を調査し救急活動、被災者の支援なども行う機関のことである。
エルウィンは、この火事が人災である可能性を疑っていた。やがて、数分程で機関から結果が入る。火事が起こる何時間か前に、二名の人間が特区へ訪れており、彼らが人外狩りと呼ばれる人間達で、貧民街で暮らす人外や闇の眷属を狩る目的で火を放ち、さらに、あの火事で貧民街に暮らしていた住民は、あの二人の子供を除き生存者はいないという報告を受けた。
エルウィンは拳を握りしめ歯をぎりっと鳴らす。
人外狩りのやり方は良く分かっていたが、白昼堂々と攻めてくるとは思っておらず、何より、無関係で何の罪もない者達を無差別に殺したのが、許せなかった。
エルウィンが、その場から離れようと歩き始めた時、鈍い轟音が響いた。
その轟音は何かを力いっぱい叩きつけたような、音だった。
「黒崎様…まさか!!」
いつの間に、離れてしまったのか‥エルウィンは急いで蓮の場所へと走り出した。エルウィンと蓮の場所は離れてしまっているが、エルウィンの脚力を持ってすれば、すぐに辿り着ける距離である。轟音が鳴ったのは二回。
エルウィンに不吉な予感が過る。
「待っていてください!黒崎様…!」
エルウィンは、祈るような気持ちで蓮の元へと向かった。