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黒崎くんは吸血鬼  作者: 工藤啓喜
3/78

第一話 2

★★★


彼がまず行ったのは切るものの調達だった。

調達するのに、手間取ると思ったが、簡単に入手できた。

蓮が手に入れたのは、小さめの果物ナイフ。

それでは、人を殺せないばかりか、果物すらも切れるのか怪しい感じの、しょぼい果物ナイフだった。


しょぼい果物ナイフを手に入れた蓮は、屋敷に戻った。

この屋敷に数ヶ月前から住んでいるが、蓮の自宅ではなく、蓮に仕える老人と使用人がいて、敷地がどれほどあるのか想像できないくらい大きくて、高級な屋敷である。


蓮は、自室に入ると、上着をベッドの上に無造作に脱ぎ捨て、先程、手に入れたしょぼい果物ナイフをズボンのポケットから出した。

刃の部分に、鞘のような安っぽいカバーがしてありそれを外すと、銀色の刃が出てきた。


蓮は、自分の血で、フローリングの床と机を汚さないように何枚も新聞紙を引いて、万が一の為の包帯と、スマホを準備する。

そして右手を机の上に置きしょぼい果物ナイフを左手に持つ。


が、なかなかナイフを降ろせなかった。


当然ながら、痛覚があり、いくら傷が治るのが早いといっても、切れたモノが元通りになる保証はない。


蓮は、ここまでやっておいてようやく、自分が一体何をしてるんだと思った。


最近、色々あって疲れてんなーとか思っていると、不意にドアの向こうから、けたたましいノックの音とアホみたいなでかい声が聞こえてきた。


ドアの向こうの主は、声が馬鹿でかい事で有名な使用人で、身体も大柄で挙動もいちいちでかい、いささか配慮の足りない使用人の男だった。

その声とノックの音に、驚いた蓮は、持っていた果物ナイフを思わず振り下ろしてしまった。


机の上には、蓮の右手。


蓮の右の手首から先が、見事に切れて瞬く間に机の上が、彼の血で赤く染まっていく。


(やっちまったあぁぁぁ!)


ドアの向こうが、けたたましくたたかれている。

部屋の中の蓮が、反応がないと知ると、その使用人が、さらにノックを大きくする。


「黒崎さん!黒崎さん居るんでしょ!居るのはわかっているんですよ!開けてください!」


(うるせェェェ!うるせーよアイツ!なんなの?バカなの?)


「黒崎さん!黒崎さんが完全に居るのはわかっていますよ!早く出て来てください!」


バカでかい声と共に、さらにさらに、ノックの音が、大きくうるさくなっていく。


(うぜぇぇぇ!つーか。それよりみ、右手が…)


蓮の右腕から、血が大量に流れている。

一向に、血が止まりそうにない。


(やばい。どうする?どうする?)


慌てふためいている蓮をよそにドアを叩くノックの音は大きく激しさを増しており、鳴り止むことがなかった。焦りと苛立ちで、テンパった蓮が声を荒げた。


「うるせー!少し黙りやがれェェ!

こっちは、それどころじゃねーんだよ!今、大事なところなんだよ!生きるかか死ぬか争ってるんだよ!デッドorアライブなんだよ!生きるか死ぬかなんだよぉぉ!」

「黒崎さん!生か死か問題なんすね!

分っかりました!この左近寺!及ばずながらお力添えを!」


蓮は、右腕を抑えながら、慌ててドアの前まで行き、左近寺と呼ばれた男を制止する。


「いやいやいや!いいって!お力添えとかいらんから!力とかいらんから!俺は、至って元気だから!大丈夫だから!」

「いえ!自分は、黒崎さんの身の周りの世話を任されていますから!そういうワケにはいきません!」

「いいから帰れよもう!」


帰れ、帰らないの押し問答が続くこと数分。


結論を話すと、出血はなんとか止まっていたが、切れた蓮の右手首から先が再生していなかった。

慌てて、ドアの向こうにいる、左近寺にエルウィンを呼びに行ってもらい、事なきを得た……。という話があった。


★★★


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