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鳥肌担任

「あっはは!間抜けな顔してるんだぜ!」


海堂をグーで沈めた後、顔が引きつりながらも楢原くんはこの学校の事について教えてくれた。

ここ、時雨舟町高校は時雨舟町に唯一ある高校で小中学校とのエスカレーター式になっているらしい。元々は何校かあったらしいが近年の子供の減少で現理事長がそのような形をとったらしい。ここ数年で建て替えたという学校は新しく田舎の雰囲気には正直あってない金持ち学校の様な風貌だった。

この学校の理事長は大層金持ちなのだろうが、洋風な外観から少し視線を外せば田んぼというのが目に入らなかったのか。とにかくアウェー感のある学校だが、生徒皆が楽しそうにしているのだから良いのだろう。


「酷いんだぜー!いきなりグーで殴るなんて!!」

「今日から始業式なんだよね。同じクラスになったらよろしくね」

「うん。僕は1組で広夢は3組なんだ。一緒だといいね」

「あ、あれ?無視なんだぜ?」



私は転入生の為、まずは職員室に向かう必要がある。2人に別れを告げて(その際も海堂はギャーギャー騒いでいたが)、教えてもらった職員室へと向かった。途中軽く視線を感じるところ、もしかしたら転入生の噂が少し流れていたのかもしれない。田舎パワー恐るべし。

職員室に着き、担任の先生を探そうとキョロキョロしているとダンディな男の人がこちらを手招きした。


「えーお前は芹沢の方だよな。俺は担任の進藤だ。半年の間だが、よろしくな」

「あ、はい。よろしくお願いします」


ダンディな見た目にかっこいい低い声。これは女子生徒に人気だろうなとぼんやり進藤先生を見つめながら思ったのだ。するとガラガラガラと大きな音を立てて、1人の女子生徒が入ってきた。ミルクティー色の髪をふわふわ巻き、ピンクの大きめのカーディガンを着ている。迷いもせず、こちらに来て態とらしく上目遣いをする彼女を見てふと思い出す。


「あの、1年3組の先生ってどこですかぁ?わたし、転校してきたばっかりだからよく分からなくて…」



上目遣いで進藤先生の袖をちょこんと摘み言ったその瞬間、ぶわっと気持ち悪くなるほどの甘ったるい匂いが私を襲った。何かの香水だろうか。どの女子更衣室で嗅ぐ匂いよりもキツイそれに思わず顔をしかめる。

しかし対象の進藤先生は目をとろんとさせ、頬を紅潮させ彼女の手をぎゅっと握ったのだ。


「お前の担任は俺だよ」

「あっ先生なんですね!ふふっ先生かっこいいから半年間頑張れそう!」

「かっこいいなんて気安く言っていいのか?俺に襲われるぞ」


そう言って顎を持たれ顔を覗き込む進藤先生に彼女は不思議そうな顔をしながら先生暴力振るう人なの?と言い進藤先生はそんな彼女の様子にやれやれといったように体制を戻したのだ。

いやいやいやいやまてまてまて。ツッコミ所が多すぎてキャパシティオーバーしてるんだけど。


「言い忘れたが、俺は進藤 潤(しんどう じゅん)。よろしくな有栖川」

「潤先生!よろしくねっ!あ、あとね?麗花、あんまり名字で呼ばれるの好きじゃないんだ。みんな麗花の事を有栖川コーポレーションの娘としか思ってないように感じて…」

「ふっ分かったよ。他の生徒にはしないんだが、お前だけ特別に名前で呼ぼう…麗花」

「ふふっ潤先生に言われるとちょっと照れちゃうなあ」

「そうやって大人をからかうんじゃない。名前で呼んでやらないぞ?」

「えぇ~。酷いよ潤先生~」

「ははっ分かった分かった。わがままなお姫様だ」



ゾワッ。なんだこの鳥肌は。確かに夏だから職員室はクーラー完備だけどそういうんじゃない。もう体の底から湧き出るこの寒イボ感。

目の前でイチャイチャしてる2人にどうしようかと思案してたら、彼女ーー有栖川 麗華(ありすがわ れいか)ちゃんがこちらに気づいたようでえっと声を漏らした。そんな麗花ちゃんに気づき進藤先生が納得したようにこちらを見た。


「麗花、お前と同じクラスに一緒に入るもう1人の転入生の芹沢 杏(せりざわ あん)だ。転入生同士仲良くな」

「あ、あ杏ちゃんがなんでここに…しかも同じクラスなんて……う、嘘よ」


いつぞやの時のようにあり得ないといった表情をする麗花ちゃんにどうしたものかと考えているとキーンコーンカーンコーンとお決まりのチャイムが耳に響いた。


「さあ、2人とも1年3組へ行くぞ」


不安しかない。とはこの事だろうか。半年間過ごすクラスがどうかマシであってくれと願うばかりだった。



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