黒塗りの車体内にて
何故こうなった。
移り変わる景色を見ながら私はただただそう思ったのだ。
あれから茶髪少年に連行され、あれよこれよといつの間にか真っ黒な車体の中に放り込まれたのである。これって本当に拉致じゃね?
隣で楽しそうにしている金髪と茶髪にぐっと眉間に皺がよった。
「で。一体これどういう状況なの」
「ああ!ご、ごめんなさい!見たことはないけど僕達と同じ舟町高校なんだと思ったら、お詫びのついでに学校まで送ってあげようと思って」
「お詫びじゃないんだぜー!何も悪いことなんてしてない!!」
やけに金髪が煩いが、茶髪少年はそれはそれは申し訳なさそうに言うので流石の私も罪悪感の様なよく分からない感情が出てきた。
しまいには何も喋り出さない私に怒っていると勘違いしたのか頭を下げ出す茶髪少年に慌ててやめるよう上げさせたのだ。
「いいからいいから。マジで顔あげてよ。私が悪いみたいになるでしょ」
「あ、うん。ありがとう。え、えっと今更だけど僕は楢原 京。こっちは海堂 広夢」
「よろしくなんだぜー!」
「本当に今更だな」
それぞれ握手をし、2人の顔を見る。うん、とりあえず茶髪の楢原くんと金髪の海堂ね(下の名前は忘れた)。
脳に名前をインプットし、車内で学校まで行く間雑談をする。
雑談をして分かったが、2人は幼馴染らしい。王道だ。確かにそう見えるというかそうにしか見えない。さぞかし楢原くんは今まで苦労したんだろうな、というのが分かる位苦労人オーラが出ていた。海堂はそんなことしらないんだぜオーラでいっぱいである。一回楢原くんに殴られて方がいい。
「へー!芹沢ってうちに転校してくんだ!」
「ねえ楢原くんなんなのこいつ。もうこの話4回目だよね?馬鹿なの?あ、馬鹿だよね」
「お、おおおお落ち着いて芹沢さん!広夢はちょっと物覚えが悪いんだっわ、悪気はないんだよ?」
ちょっとの話ではない気がするが。焦った楢原くんが少し可哀想に見えたのでここで抑えておこう。なぜだろう。楢原くんを見ていると罪悪感が凄く出てくる。これはあれだ楢原くんは罪悪感製造マシーンだ。自分で言っててよくわからなくなる。
「もうすぐ学校なんだぜー!さすが京の家は金持ちなんだぜー!」
「僕の家はお金持ちじゃないよ広夢。お金持ちっていうのは会長みたいな家のことさ」
「えーでも京の家っていつも帰った時に広夢に挨拶するのいっぱいいんじゃん!あれってお金持ちの証拠なんだぜ」
「あれは……違うんだよ広夢………あれは……」
急に遠い目をした楢原くんにどうしたのかと聞こうとしたら運転手の怖面の男の人が無駄に低くいい声で着きましたというのだから金持ちってすげー。三人でいそいそと車から出たら、さっきの怖面の人がいってらっしゃい坊ちゃんと親指を立てニカッと笑った瞬間、楢原くんが急に真顔になって私と海堂を連れて門に入ったのには驚いた。あ、お礼言えなかったな。
「せ、芹沢さん。ここが時雨舟町高校だよ」
にへらと笑った楢原くんのバッグに大きく綺麗な校舎が見え、まるで田舎の学校とは思えない設備に私はポカンと口を開けたのだった。