エピローグ 見えざる手、もしくは声
え、俺?俺はあれだよ、狸だよ。みんなの人気者の狸。
ハハッ、冗談だぜ、ここ笑うとこ。
え、ああ、あんとき?そりゃあまあびっくりしたさ、なんてったってあの暗い狐が、虎をうしろに引き連れてんだぜ。
しかも何でか分からねえけどあの狐号泣してるし、虎は虎で後ろですっげえ形相してるし…。
なんだあの状況。俺だって普通に虎が来てんならビビって逃げたりするぜ、いつもそうしてるしな。でも全然違うんだよ、いつもと。
周りの奴もびっくりしてたぜ。逃げるどころじゃねえよ、動くどころじゃねえよ。俺達が逃げなかったことがいつもと違ったっていうのは確かだぜ。でもそもそもそれ以前にだな、
あの二人が異常だったんだよ。
いつもと違ったのはあの二人なわけ。俺たちがどうのじゃなくて。
ん、そういやなんであんたこんなこと聞くんだ?誰かが自分の名前を呼んだような気がした?なんだよそれ、あんたそれじゃあ自分がどこにいてもなんでもわかるみてえじゃねえか。そういや、あんたの名前聞いてなかったな、あんたなんて言うんだ?シンラバンショウ?なんだそれ、ああ名前ないのか…。悪いななんか。そういやなんで俺はあんたにこんなこと話してんだろうな。まあなんでもいいか。じゃあな。