喰えない虎
準備は万端だ。仲間の一匹が狐に襲いかかった。
「 」
声にならない悲鳴が轟いた。
大量の獲物が四方八方に散っていく。しかし当然のことながら既に退路は断ってある。今日は朝からなんだか本調子ではない。思考が濁っている。ほかは仲間に任せて俺はゆっくりと逃げ遅れた奴でも喰うとしよう。
少し離れたところに一匹の狐がいた。まあ十分に射程圏内だ。俺は反撃の恐れがないか、逃げられる恐れはないか、最善の注意を払って狐に近づく。カサリ、と足元で音がした。
(気付かれたか)
しかしもうすでに相手は俺の射程圏内にいる。このまま喰らおう。相手を逃がさないようにしっかりと睨みつけながら俺は距離をつめていく。
獲物の狐の目を見るとそこにはいつも通りの光景があった。
もうおしまいだという諦観。
漠然とした死への恐怖。
俺にはこれがわからない。
今朝の考えがおれの頭の中に蘇るが、無心をこころがける。
「ちょっと待って下さい。」
当然、俺が発したものではない。つまり。
「それに、あなたのためにもそうした方がよいと思いますがね。」
狐が俺を見ていた。
まっすぐに。
その目には先ほどまでの恐怖はなかった。
そして俺は