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木になったビスケットさん

作者: 昼月キオリ
掲載日:2026/05/24


湖からひょこっと顔を出したワニのビスケットさんは辺りをキョロキョロ見渡すと駆け出しました。


ビスケットさんがしばらく走っていると、

近くにいたうさぎのフロマージュ君がぴょんぴょんと近付いてきて声を掛けます。


「ビスケットさんビスケットさん、そんなに急いでどこへ行くの?」


「フロマージュ君、私は森へ行かなければいけないのです。」


走りながらビスケットさんが答え、

フロマージュ君が追いかけながら更に聞きます。


「どうして森へ行きたいの?」


「森が私を呼んでいるからです。」


「僕も行きたい!」


「いいですよ。」


次に現れたのはキジのカヌレさんです。


「おやおやビスケットさん、フロマージュ君、どこへ行くのですか?」


「私は森へ行かなければならないのです。」


「それでは俺も付いて行きましょう。」


「どうぞどうぞ。」


最後に現れたのは大きなくまのラテちゃんです。


「ビスケットさん、フロマージュ君、カヌレさん、そんなに急いでどうしたんだい?」


「ラテちゃん、私はこれから森の中へ行くのです。

あなたも一緒に行きますか?」


「じゃあ、あたいも一緒に行こうかね。」


ビスケットさんはフロマージュ君、カヌレさん、ラテちゃんと一緒に森を目指します。


数日が経ち、ようやく森にたどり着きました。


「ビスケットさん!着いたね!」

とフロマージュ君。


「ビスケットさん、着きましたね。」

とカヌレさん。


「ビスケットさん、着いたみたいだ。」

とラテちゃん。


「ええ、ようやくたどり着きました。

皆さん、ここまで一緒に来てくれてありがとう。

私はここでサヨナラしなければなりません。」


「え!?どうして!?」

とフロマージュ君。


「サヨナラだなんて、一体どうしたんですか?」

とカヌレさん。


「サヨナラなんて言わないでおくれよ。」

とラテちゃん。


「私はずっと自分が死ぬ場所を探していたのです。

ひとりぼっちでずっと寂しかった。だから最後は楽しい思い出を作りたくて湖から森を目指したのです。

皆さんに死ぬ姿を見せるのはどうかと思ったのですが・・・。」


「そうだったんだね・・・。」

とフロマージュ君。


「俺達、ワニさんと旅ができて楽しかったですよ?」

とカヌレさん。


「あたいもだよ!それに、何も知らされずにビスケットさんがいなくなってしまうよりもこうして教えてくれて嬉しいよ。」

とラテちゃん。


「ありがとう、ありがとう・・・私も皆さんと旅ができて楽しかった。」


皆んなは最初、ビスケットさんがただならぬ様子だったので心配して付いてきたようでした。

 

ビスケットさんは湖の中では孤独でしたが、

他のワニ達がいない時間を縫ってフロマージュ君やカヌレさん、ラテちゃんが会いに来てくれてお話しをしてくれていたのです。


ビスケットさんは死に急いでいたのではなく、

自分の最期を悟り、楽しい思い出を作りたかっただけなのでした。


ビスケットさんは草花が生えていない広場に行くとペタンと体を地面にくっつけます。


サアアッ・・・と風が吹き、ビスケットさんの体は小さな芽になりました。


それからというものの、

フロマージュ君とカヌレさんとラテちゃんは毎日水をあげに来ました。


すると、小さな芽はぐんぐん伸びて大きな大きな木になり、水をあげなくても大丈夫になりました。

木の表面はでこぼことしていて、ところどころウロコのように見えます。


木漏れ日が差し込み、葉っぱがひらひらと三匹を包みます。

まるで、来てくれてありがとうと挨拶をしているようでした。

 

「ビスケットさん、僕らずっと忘れないからね。」

とフロマージュ君。


「寂しくはありませんよ。ビスケットさん。」

とカヌレさん。


「また来るよ。」

とラテちゃん。


大きな大きな木の下。

時折、うさぎのフロマージュ君とキジのカヌレさんと

くまのラテちゃんは宴会をするようになったのでした。


 


 

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