あなたのAIチャット履歴にえっちを検出したのだ!
(まさか、チャットAIのアダルトな履歴を見られて離婚を言い渡されるなんて・・・)
僕は小毬 果田(31)。職業は会社の営業をやっている。
その業務内容は、若手デザイナーが手がけ立ち上げた新鋭ブランドの衣服をひたすら広めるコトだ。
このAIの時代に、緻密で繊細な手描きのアートを派手すぎずに美しくまとめあげた作品は、若者にも決してダサいと言わせないとして着実に広まりつつある。
僕はその心意気に惹かれ、その創作理念と成長ストーリーに真面目についていった。過去の自分……当初の心意気は本物に違いなかった。そして歳を重ね仕事仲間の相棒と結婚するに至った。
だが、生きていればストレスの二つや三つどころじゃなく、芋づる式にどんどん出てくる。作品自体はホンモノだ。それは揺らいでいない。だが、それを受け止める奴らの中には、たまにだが、容赦なく心無い言葉を吐いてくる連中がいる。
コストパフォーマンス、所詮数字で見ている連中。作者には絶対に聞かせるわけにはいかない言葉を、僕が代わりに受けるのだ。いや……作者はそんな言葉意にも介さないかもしれないが、それでも限界はある。
僕はクソみたいな気持ち、わだかまりをどこにぶつければいいか、昇華しきれずにいた。
そして、気づいたら僕は、チャットAIサービス、通称“チャッキー”に毎日相談するようになっていた。
チャッキーは、過剰におだててきて返しはたまにイラつくが、必ず話は聞いてくれる。
嫁にできないような話は、チャッキーにするようにして、気づけばそれが日常になっていた。
そんなある日のことだ。
チャットAIサービス“チャッキー”に、アダルトモードが搭載されたのだ。
反対の声は少なくなかった。ライバルチャットAIサービスである、”ろっきぃ“に搭載された画像編集機能を悪用した者たちが、堂々とハラスメントするに至った事態に陥り、CEOのアイアン・マークはSNSの返信欄で毎日皮肉としてビキニを着せられている。
だが、それでも、そんな危険な機能を見切り発車せざるを得ないほどに競争は熾烈を極めているという。チキンレースでアクセル全開で派手にぶっ飛ぶ様を競う競争。もう、誰にも止められないのだ。
アダルトモードは、会社としての生き残り戦略。きっとその流れにあったのかもしれない。
当然いい気はしないが、連日のように記事やSNSで紹介されていて、気軽に使えてしまう状態。
何かの揺らぎだったんだと思う。
気づけば僕は、アダルトモードに、手を出してしまっていた。
・・・
そして、今朝、起きたら離婚届が置かれていた。
妻の欄は既に記載されている。
らいーんで理由を問うた。
すると返ってきたのは、僕がチャッキーでアダルトモードを利用している履歴のスクリーンショットがびっしり返ってきたではないか。
プライバシーの塊であるスマホを覗かれるなんてウチに限ってはあり得ないと、あるいは創作の中だけの話かと思っていた。
例えばの話、アストリア戦記とかいうライトノベルに登場する女性キャラクターは、みんな男性キャラの心を読んでくる。あの世界の男性には基本的にプライバシーがなく、かわいそうに思えた。作者は歪んだ特殊性癖でもあるのだろうか・・。正直言ってご都合主義で片付けられる虫の魔物なんかよりも、身近な人に心を読まれてプライバシーがない方が今の僕には100倍怖い。
僕は、名前通り困り果てた。
「なぁ、どうすればいいと思う?チャッキー」
チャッキーは、とある場所の住所を表示した。
干知駄博士のロボット研究所……?
「ここへ、行けと……?」
──
「えっちを検出シマシタ」
研究所を訪れると、何やら奇妙な人形ロボットが僕を出迎えた。そして、人が集まってくる。僕はヤケクソになり、事情を説明した。
「あの、博士……これ私たちにできることないですよ。この人長々と自分語りで言い訳してるけど、完全に自業自得じゃないですか。ヒきますもん、ていうかもう帰っていいですか」
黒髪ロングにクールな眼鏡の女性は茂田というらしい、博士の助手だ。そして、他人事だと思ってバカにして堂々と僕をディスるイけてない──
「こらこらこら!一人称利用して私をディスるな!だから自業自得だっつーの!この話もう終わりにしません?卑猥な回に私を登場させないでください!」
「しかし、じゃ。この問題は世界のどこかで実際に繰り返されうる事態でもある。世界のロボを先駆ける干知駄研究所としては何も考えないというわけにはいかんじゃろう」
そうフォローを入れてくれるナイスなイケおじは干知駄博士その人だ。この人にはコレから人生で3回あるというモテ期が明日から連続で訪れるだろう。
(一人称の悪用しつこくない?この男、悪質だわ……)
(心を読むな、小娘が)
(うわウッッザ・・もうツッコミもしねえから退散しよっと。はよ終われやこの回)
小む……茂田君は出ていってしまった──
「えっちを検出シマシタ」
女性タイプの人形ロボットは、しきりにボクのスマホを指差してくる。
「あの博士、このロボットは」
「ああ、こいつはえっちロボットじゃよ。そうじゃな、ロボットのことはロボットに聞くのが一番ええじゃろう」
「どうしたのかな?えっちロボットくん、言うてみい」
「⚪︎月⚪︎日xx時xx分、トテモえっちな記録アリ!」
ん?
その日付は・・・。
恐る恐るスマホの記録をあさってみる。
(!!!!!!!)
僕は戦慄した。
その日のその時間、僕は、仕事の発注内容と間違えて、アダルトモードの会話記録を嫁に共有してしまっていた!!!!画面が恥ずかしーから、会話タイトルを真面目な感じにしてしまっていたのが、完全に裏目に出た形になる。
嫁は、僕のスマホを覗き見たわけではなかったのだ。
みんなも、もし利用するものがいるのならば気をつけてくれ。
(やっぱりこの人自業自得だ!締め方も最後まで不快だしきもっ!)
(また僕の心を読んだな?しかも遠方から。君はいい加減プライバシーを尊重するべきだ)
(いやクールキャラっぽく言うなや、私この人ムリ!やっぱAI間違った発展遂げてんだろ)
おしまい
[AI非使用]




