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ヒロインになった日

誰だって一度は考えたこと、あると思うんだ。

——物語のヒロインになってみたいって。

私、美浜乃亜は、どこにでもいる普通の高校生。

それなりに楽しい毎日だけど、ちょっとだけ物足りない。

「はあ……なんか、毎日つまんないなあ。ヒロインみたいになってみたいなあ」

ぼんやり呟いたその瞬間だった。

『いいだろう。その願い、聞き入れた』

……え? 誰の声?

あたりを見回しても、誰もいない。

気のせい……だよね?

「って、やばい! このままだと遅刻しちゃう!」

慌てて走り出して、曲がり角を曲がろうとしたその時——

「きゃっ!」

誰かとぶつかってしまった。

うう……まさか朝から人にぶつかるなんて。

漫画なら、こういう時ってイケメンとぶつかるのが定番だけど……どうせ現実はサラリーマンとか——

「お嬢さん、大丈夫ですか?」

え……?

顔を上げた私の前にいたのは、まるで芸能人みたいに整った顔立ちの男の子。

しかも、私に手を差し伸べてくれていて——

「えっと……あの、ありがとう……ございます」

「お怪我はないですか?」

「だ、大丈夫です……」

「それは良かった。では、また」

そう言って、私が落としたノートを拾って手渡してくれた彼は、まぶしいくらいの笑顔を残して去っていった。

……な、何あれ。

現実にあんなイケメンって存在するの?

ていうか、曲がり角でイケメンとぶつかるとか、漫画の世界じゃん……!

でも、私は気づいていなかった。

彼が「また」と言ったことに——


***


その日のホームルーム。先生の声が教室に響く。

「みんな、今日はビッグニュースがあるぞ。なんと、このクラスに転校生が来る!」

「えー!」「イケメンがいい〜」「女子だったら仲良くなりたい!」

そんな声が飛び交う中、教室の扉が開いて——

「藤堂伊織です。よろしくお願いします」

……え? ええ!?

朝ぶつかった、あのイケメンくん……!

「イケメンすぎ……」「顔面偏差値高っ」

クラス中がざわついてるけど、私はそれどころじゃなかった。

まさかさっきの人が転校生で、しかも私のクラス!? そんなことってある?!

「藤堂の席は……じゃあ、美浜の隣だな。美浜、いろいろ教えてやってくれ」

「は、はい……!」

信じられない気持ちのまま返事をすると、藤堂くんが私の隣にやってきて——

「さっきぶりだね、乃亜ちゃん」

「えっ、なんで私の名前……」

「さっき落としたノートに書いてあったから」

「……あっ、なるほど」

「これからよろしくね、乃亜ちゃん」

にこっと笑った藤堂くんは、朝よりもさらにまぶしかった。

……なんだろう。

今日から、私の平凡な日々は、ちょっと変わってしまった気がする——。


藤堂くんは、あっという間に学校中の注目の的になった。

イケメンすぎるそのルックスに、男子も女子もみんな興味津々。

お昼休みには、他のクラスの子や先輩まで様子を見に来るほどだった。

……だけど、そんな状況でも藤堂くんは、ずっと私に話しかけてくる。

「乃亜ちゃんって、本読むの好きなんだね。今度おすすめ教えて?」

「さっき言ってたパン屋さん、すごく気になってるんだけど、場所教えてくれる?」

自然体で話しかけてくれる藤堂くんに、私はなんだかそわそわしてしまう。

(こんなに距離近くて……周りからどう思われてるんだろう)

ちょっと不安になって周りを見てみたら、女の子たちが私たちを見つめていて——

でも、なんだかその目が、キラキラしてた。

「え、やば……あの2人並んでるの尊すぎない……?」

「完全にお似合いすぎる……カップルかと思った……」

「推しカプ爆誕……!」「藤堂くん狙うのやめるわ。乃亜ちゃん以外無理……」

……えっ、ちょ、ちょっと待って!?

藤堂くんは確かにイケメンだけど、なんで私が“美少女”扱いされてるの!?

鏡を見直したくなるくらいびっくりしていたら、近くにいた女の子が笑って言った。

「え? 乃亜ちゃんめっちゃ可愛いじゃん。気づいてなかったの?」

「乃亜ちゃんが可愛くないなら、私たちどうなるのよ〜笑」

……う、うそ。

私って、そんな風に見られてたの?


*作者注:乃亜ちゃんは本当に可愛いです。自覚していないだけです。


***


放課後、帰り支度をしていると、藤堂くんが声をかけてきた。

「乃亜ちゃん、一緒に帰ろ?」

「えっ、あ……うん」

周りの視線がすごかったけど……勢いに流されるように、気づけば一緒に歩いていた。

藤堂くんは、やっぱり背が高い。隣に並ぶと、私が小さく感じてしまう。

「今日、隣の席で嬉しかったな。これからたくさん話せそう」

「う、うん……私も、少しびっくりしたけど……」

会話はどこか他愛のないものだったけど、藤堂くんの声は不思議と心地よくて。

歩くスピードも合わせてくれて、なんだか優しい人だなって思った。

そんな時、ふいに彼が言った。

「乃亜ちゃん、ちょっとうちに寄っていかない?」

「え……おうち?」

さすがにそれは……と戸惑っていると、藤堂くんが笑って言った。

「兄貴を紹介したいんだ。大丈夫、ちゃんと乃亜ちゃんのご両親の許可も取ってあるから」

「え? どういうこと?」

「実はさ、うちの母さんと乃亜ちゃんのお母さんが幼なじみなんだ。家も、隣同士」

「えっ!? ……あっ、そういえば引っ越しのトラックが来てた……!」

「そうそう。うちの親もいるし、なにも変なことしないよ?」

「……!!」

「ふふ、耳、真っ赤になってるよ」

も、もう……からかわないでよ……


***


そんなこんなで、気づけば藤堂くんの家の前に着いていた。

「さ、入って」

扉を開けてくれた彼に導かれて、私はおそるおそる家の中へ。

「お、お邪魔します……」

「乃亜ちゃん! いらっしゃい!」

「待ってたよ」

えっ……出てきたのは、高校生くらいの超イケメン2人と、若々しくて美人すぎる女性……!

「この2人が、俺の兄貴たち。こっちが晃矢兄。3年生で、もう一人が大雅兄。2年生。2人とも、俺たちと同じ高校だよ」

「……よろしくお願いします」

「そして、この人が母さん」

「43歳よ」

「えっ!? めっちゃお若い……!」

「ありがとう乃亜ちゃん〜! 小さい頃の写真、たくさん見せてもらったけど……こんな可愛い女の子に育ってるなんて、びっくりよ〜!」

「い、いえっ……そんな、恐縮です……!」

「私、梓って言うの。梓さんって呼んでね♪」

「母さん、ちょっと静かにしてて。乃亜ちゃんがびっくりしてるって」

「もう、伊織ったら〜。じゃあ、お邪魔しないように引っ込むわね」

ぱちん、と完璧なウィンクを残して去っていく梓さん。

……すごい家族だ。

その後、お兄さんたちとも少し話して、自己紹介を済ませて——

私はその日のうちに家に帰ることにした。


***


「はあぁ……」

お風呂あがり、ベッドに寝転びながら、私は今日1日の出来事を思い返す。

(朝、イケメンにぶつかって……その人が転校生で、隣の席になって……

お母さんが幼なじみで、家もお隣で……イケメン兄たちに囲まれて……)

……なんか、現実味がない。

夢でも見てるみたい。

でも、どこか心があたたかくて、ふわふわしてて——

ちょっとだけ、明日が楽しみになった。

「よし、明日も頑張ろ……おやすみなさい」

私はそっと目を閉じた。

お読みいただきありがとうございます!!jk1の水無月アメリです。趣味でなんとなく書いていた小説をいろんな人に読んでもらいたくて始めました。素人が書いた穴だらけの文章ですが、温かい目で見てください。

きっと埋もれていたこの話を見つけて目を通してくださりありがとうございました。もし少しでも気に入ってくださったら、続きも読んでもらえると嬉しいです。最後まで読んで下さりありがとうございました!!!!!

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