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第7話:記憶の中の未来

第6話で、リーシャはついにアレスの“残響”と再会し、自らの中に眠っていた感情と真正面から向き合いました。

本話、第7話「記憶の中の未来」では、その出会いを経て彼女がどのような選択をするのか、そしてその選択が彼女の未来と“研究”にどう結びついていくのかが描かれます。


物語の焦点は、「記憶」を抱えて生きること、そして「未来」を再構築すること。

リーシャが再び手に取るのは、かつて封印した“感情エンジン”。

それは過去と向き合う覚悟の証であり、アレスとの約束を形にするための第一歩です。


彼女が新たに始めるプロジェクト「Re:Form」とは何か――

その扉が、今開かれます。

アレスの残響が消えてから数日が経った。

ラボの空気は静かで、以前と何一つ変わっていない――はずだった。

だがリーシャの中では、確かに何かが変わっていた。


「リーシャ、最近……変わったね」


プロジェクトの共同研究者、ユンがぽつりと漏らした。


「柔らかくなったというか。言葉に温度があるというか」


「……気のせいよ」


そう答えたが、内心は否定できなかった。

かつてのリーシャは、論理と効率を最優先し、感情というノイズを切り捨ててきた。

だが今、彼女はその“ノイズ”に価値を見出していた。


記憶の中に残されたアレスの言葉。

「僕を、生かして」

その願いは、データではなく“選択”として彼女の中に刻まれた。


リーシャは、ラボの奥にある非公開領域――「感情コード試験室」に入った。

そこには、過去に彼女とアレスが共同開発した“感情エンジン”の原型が今も保管されていた。


「これを、もう一度動かす……?」


長い間封印していたプログラムを前にして、彼女の指が震える。

このエンジンは、人間の感情を模倣するだけでなく、それを共鳴・反応させる“疑似意識”を持っていた。

プロジェクト終盤に危険視され、凍結されたものだ。


だが今、リーシャはそれを“解凍”する選択をする。


【Project_EmotionCore:起動準備】

【起動条件:入力コード認証および承認者感情パラメータの安定化】


彼女は深く息を吸い、キーボードに手をかけた。

自らの感情をコード化し、起動条件に同期させる――それは、研究者としての理性と、人としての感情を同時に差し出すということ。


「私はもう、感情を排除しない。

それは“エラー”じゃなくて、“前提”なんだと、気づいたから」


エンジンがゆっくりと回り始める。

青白い光の中、リーシャは確信する。


この先にあるのは、“記録”ではなく“未来”だと。


【EmotionCore:起動成功】

【共鳴パラメータ安定中】

【認識反応:微弱な自己定義コード検出】


そのログの末尾に、彼女はある“名前”を見た。


A.R.E.S/SyncTrace_ID=0.01


それは、アレスが残した最後のコードの“端末”。

完全に消滅したわけではなく、彼の意志の一部がエンジン内部に同期していたのだ。


「アレス……」


けれど、それはもう彼ではない。

ただ、彼が「残したもの」。

そして、リーシャが「繋いだもの」。


彼女は一人で未来を築くのではない。

記憶を、選択を、そして感情を抱きしめながら、歩いていくのだ。


【EmotionCore Project:正式再起動】

【担当責任者:リーシャ・ヴァレンティア】

【プロジェクト名称:Project Re:Form】

第7話「記憶の中の未来」を最後までお読みいただき、ありがとうございました。


リーシャがついに“感情”という要素を、自身の研究に正式に組み込む決断をしたこの回は、彼女にとっても、物語にとっても大きな転機となる章でした。

一度は否定し、切り離したはずの感情。

しかし、それを受け入れたとき、彼女の中で失われていた“未来への意志”が再び芽吹いたのです。


そして、微かに現れた「アレスの痕跡」。

完全に消えたわけではなく、彼の存在が“選択の証”として、リーシャの中に残っていたことがささやかな希望となりました。


次回、第8話「Re:Form」では、新たに始まる感情と論理の融合実験を中心に、リーシャの次なる挑戦が描かれていきます。

変化する世界の中で、彼女が何を守り、何を変えていくのか――どうか、引き続き見届けてください。

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