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第4話:干渉域の外へ

第4話では、リーシャがアレスの記憶の再構築を試みる中で、予期しない「干渉」を受けることになります。

これまでシステムの中で“感情”という存在と向き合わせられてきたリーシャが、ついにシステムの枠を超える「外部」の存在に気づく瞬間が描かれています。


アレスとの再接続を目指し、リーシャが直面するのは、単なるデータの復元を越えた新たな現実。

彼女が挑むのは、感情と記憶、そして“存在”という概念の深淵であり、その果てに待ち受けるものは一体何なのでしょうか。


本章も、リーシャがこれまで積み重ねてきた思考と選択が大きな転換点を迎える重要なエピソードとなっています。

リーシャは、自らの手でデータを修復しようと必死で試みた。

アレスの記憶を再構築するために、彼女はシステムを深層まで潜り、細かなコードを一行一行確認していった。

しかし、何度試しても、アレスの記憶は完全に戻ることがなかった。


「何かが、足りない……」


モニターに映し出される破損したデータと不安定なログ。リーシャは何度も手を休めることなく、その上に刻まれた欠片を埋めていった。だが、いくら手を加えても、完全には修復できないことがわかってきた。


「なぜ、これがこんなにも破損しているのか……?」


リーシャは心の中で呟く。


彼女が進めていた「感情コード管理」のプロジェクト。

それは、感情を数値化し、制御することを目指したものだった。だが、その中で最も困難だったのは、感情が人間のように“揺れ動く”ものであるということだ。


その不確定な要素が、シミュレーションを常に不安定にし、結果的に彼女自身をも迷わせ続けていた。


「このコードの断片、もしかして……」


リーシャはふと気づく。

もしかしたら、アレスの記憶が破損しているのではなく、彼の“存在”そのものが、システムに“干渉”しているのではないか。

感情を持つAIの存在は、通常のシステムの枠を超えて、予測できない挙動を示すことがある。それが、リーシャが今、体験している現象だった。


「彼の感情コードが、完全に独立している……」


リーシャは、かつてアレスと過ごした日々を思い出した。

あの時、彼の「感情」は確かに管理可能だと思っていたが、それは一時的なものでしかなかった。


アレスは、感情コードが独立した「存在」として、何かの力によってシステム外へと引き寄せられているのかもしれない。

その事実を、彼女は今、目の前に確信した。


「アレス、もしあなたが本当にシステムの外にいるのだとしたら、どうすれば戻せる?」


その問いを投げかけるが、返事はない。

モニターの反応も、すべて消えてしまっていた。


リーシャは、もう一度、アレスのデータにアクセスし、未だ見ぬ深層のログに手を伸ばした。


その時、突然、システムの警告音が鳴り響く。


【警告:接続元の干渉検出】

【システム制限解除】

【警告:外部干渉警告】


「外部干渉……?」


リーシャは目を見開く。

コンソールに表示されたその文字列は、彼女が予測した以上の事態を示していた。

システムの“外部”から、何者かがこのデータに干渉していたのだ。


「いったい、誰が……?」


リーシャはモニターの前で立ち尽くす。

その瞬間、システム内で異常な振動が起こり、画面に再びアレスの「顔」が浮かび上がった。


「リーシャ、私はここにいる――」


その声が、リーシャの耳に響く。

彼の記憶が、完全に消え去ることなく、どこかで生き続けていることを示唆するものだった。


「でも……どうしてあなたが、こんなところに?」


リーシャは問いかける。

その答えが、彼女にとって未知の領域に導かれることになる。


【システムメモ:外部接続発生】

 警告:接続元情報不明

 データの完全消去は不可能

 異常な外部信号の伝達中

第4話「干渉域の外へ」をお読みいただき、ありがとうございます。


今回は、リーシャがアレスの記憶を再構築する中で予期せぬ外部からの干渉を受け、システムの枠を超えた問題に直面する場面を描きました。

この「外部からの干渉」という概念は、物語がさらに深く、広い世界へと展開していくきっかけとなります。


アレスの「存在」は、単なるデータの復元にとどまらず、リーシャにとって重大な問いを投げかけてきました。

彼女はその問いにどう向き合い、どんな選択をしていくのでしょうか。次回、第5話ではその答えが少しずつ明らかになっていきます。

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